KDDIとKDDIスマートドローンは2024年11月18日、東京電力リニューアブルパワー(以下、東電RP)が運営する葛野川ダム(山梨県大月市)において、Starlinkを活用したauエリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」を用いた自律飛行型ドローンによる、地震発生後を想定した臨時点検を同月14日に実施したと発表した。なお、Satellite Mobile Linkで水力発電ダムの通信環境を構築した事例は、国内初だという。
本実証におけるシステムイメージ
葛野川ダムにおける地震発生後の一次点検では、作業員が必ず現場へ出向く必要があった。管轄事務所からダムへの移動経路は、道路の陥没や落石などにより安全状況が不明で、人命に関わるリスクが非常に高いことに加え、ダムでも一定時間内に全ての点検箇所を目視確認して報告をしなければならないなど、有事においてダムの健全性を迅速に把握することが困難だった。
迅速な状況把握のためにドローンなどの活用が期待されていたが、ダム外部からの通信回線の新規引込みが困難など多くの課題があり、通信環境の改善がなかなか進んでいなかった。
本実証では、KDDIが葛野川ダムの水門上部に、Starlinkと4G LTEアンテナを一体にした架台型のSatellite Mobile Linkを設置したことにより、最小限の設備でダムの堤体から調整池上流部約2kmの範囲まで通信環境を構築し、緊急通報を含めた音声電話やデータ通信が可能となった。これにより、現場の状況を遠隔で確認することに加え、作業支援や緊急対応時の関係者との迅速な連絡などのICT活用を進めることができる。
水門上部に設置した「Satellite Mobile Link」
また、Satellite Mobile LinkのLTE活用により、自律飛行型ドローンがダム堤体から半径約2km圏内の状況確認を遠隔かつ自動で行うことが可能になった。ダムにおける点検業務の省人化・効率化が進むとともに、現場へ向かう道路の陥没・落石などによる人身災害のリスクを低減できるという。
本実証では、人に代わり、自律飛行型ドローンがダムから半径約2km圏内の点検飛行を行い、ダムに異常がないかを遠隔地からでもリアルタイムに把握可能なことを確認した。地震時一次点検業務の効率化促進により、危険な保守・点検業務から作業員の人命を守ることに貢献するとしている。