日本IBM 北氏「震災で一番役に立ったのはUC」――UCサミット2011レポート

「震災時に利用頻度が増えたのはUCとソーシャル」――。日本IBMはなぜ東日本大震災という緊急事態にも柔軟に対応することができたのか。同社の北好雄氏は2011年9月15日に開催された「UCサミット2011」で、「震災時のコミュニケーション、ITシステム、制度の実際」と題した講演を行った。

「UC(ユニファイドコミュニケーション)が一番役に立った」――。東日本大震災の発生時、日本IBMの社員はどうコミュニケーションし、どう行動したのか。日本IBMの北好雄氏はUCサミット2011で、IBM自身の経験をベースに、柔軟なワークスタイルの有用性とそれを支える制度やITシステムの実際について講演した。

北氏がまず語り始めたのは、3月11日当日の自身の行動である。午前中に顧客とのアポイントメントがあった同氏が用件を終えて自宅に戻ったのは13時ごろ。地震が起きた14時46分は在宅勤務中で、「幸いにして帰宅困難にはならなかった」。震災の翌週についても、北氏は交通機関の混乱を避けるため、自宅から30分ほどのサテライトオフィスで働いた水曜日を除き、自らの判断で在宅勤務を実施したという。つまりその週、所属する箱崎本社には一度も出社することがなかったが、「日常業務に関してはほとんど影響がなかった」という。

日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 Lotus事業部 クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ コンサルティングITスペシャリスト 北 好雄氏
日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 Lotus事業部 クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ コンサルティングITスペシャリスト 北 好雄氏

なぜ日本IBMはビジネスを継続できたのか?

北氏は日常業務に支障が出なかった理由として、IBM社員で日頃から実践している柔軟なワークスタイルを挙げた。「そのため、震災にも柔軟に対応することができた」。

IBMの柔軟なワークスタイルを支えているのは、まず在宅勤務制度である。多様性を重視するIBMでは、勤務場所や勤務形態についても多様性を認めており、多くの社員が普段から積極的に在宅勤務制度を利用している。北氏個人も「よほどの用がない限り、会社に行くことはもうあまりない」とのことだ。震災発生を受けて急遽、在宅勤務を実施した企業は多いが、IBMの場合は従来から在宅勤務に慣れ親しんでいたため、出社困難な事態にもスムーズに対応できた。

働く場所や時間の違いを克服して共同作業するためのコミュニケーション・コラボレーション基盤も重要な役割を果たした。特に震災時に利用頻度が増えたのは、同社のUCソリューション「IBM Lotus Sametime」だったという。予定されていたフェイス・トゥ・フェイスでの社内ミーティングは、すべてUCによるオンライン会議で代行。また、Lotus事業部では震災後1カ月ほど、在宅勤務する場合はSametimeで連絡可能な状態しておくことをルールにしたという。さらに震災直後は電話がつながらない状態が続いたが、電車の中に閉じ込められた社員がSametimeのテキストチャット機能で同僚と連絡を取り合うといった活躍の仕方もしたそうだ。

震災直後の日本IBMの社内コラボレーション環境
震災直後の日本IBMの社内コラボレーション環境

ソーシャル、いわゆる企業内SNSである「IBM Connections」の利用も増えたという。「震災後2週間くらいは在宅勤務する人が多かったが、近況をちょっとつぶやくだけで、一体感や連帯感を感じることができた」。加えて、復興支援にもソーシャルは大きく貢献した。震災直後に日本IBMの顧客や東北地方の復興支援について議論する有志のコミュニティがスタート。実際、このコミュニティで生まれたアイデアのいくつかが、IBMの復興支援策として実行に移された。また、海外のIBMでも日本を支援するためのコミュニティが有志で立ち上がったという。「170カ国で事業を展開するIBMには、巨大災害で被災した社員や、その復興支援を行った社員が数多くいる。そうした経験を持つ人たちが様々な提言をしてくれた」

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