イー・アクセスが公開討論会、夏野氏らが900MHz帯割当などについて議論

900MHz帯の割当を希望するイー・アクセスが公開討論会を開いた。パネラーとして参加したのは元NTTドコモの夏野剛氏、元経済産業省の岸博幸氏、インターネット総研の藤原氏。900MHz帯の割当などについて、活発な議論が交わされた。

900MHz帯の割当を希望するイー・アクセスは2011年10月3日、「通信競争政策に関する公開パネルディスカッション」と題した公開討論会を開催した。900MHz帯は2012年から利用可能になる帯域で、1社に30MHzが割り当てられる予定となっている。

パネラーとして参加したのはインターネット総合研究所 代表取締役所長の藤原洋、慶應義塾大学 特別招聘教授の夏野剛、同大学院 教授の岸博幸の3氏。モデレーターはMM総研 代表取締役所長の中島洋氏が務めた。

討論会に先立って、まずはイー・アクセス 代表取締役社長のエリック・ガン氏が900MHz帯割当に関するアピールを行った。イー・アクセスの主張は要約すると「総務省は、イコールフッティングの観点から周波数を割り当てるべき」というものだ。NTTドコモが140MHz、KDDIグループが120MHz、ソフトバンクグループが104MHzの帯域を保有している一方、「イー・アクセスは30MHzしか持っていない」とガン氏は訴えた。

イコールフッティングを強調するのはソフトバンクも同様だが、ソフトバンクが「800MHz帯を持つドコモ/KDDI vs ソフトバンク」という構図で語るのに対し、イー・アクセスが取るのは「既存大手3社 vs 新興事業者」という構図だ。ソフトバンクグループのWireless City PlanningがTD-LTE互換のAXGP(AdvancedXGP)による下り110Mbpsのサービスを発表したことに触れたうえでガン氏は、「我々の場合、高速化についても(現状では)100Mbps以上のサービスは導入しにくい。大手3社と競争できるよう、(競争)バランスを考えた周波数割当を行ってほしい」と語った。

大手3キャリアの保有帯域などを挙げ、エリック・ガン社長はイコールフッティングを訴えた
大手3キャリアの保有帯域などを挙げ、エリック・ガン社長はイコールフッティングを訴えた

具体的にはイー・アクセスは、(1)LTE人口カバー率、(2)MVNOユーザーの自社の全ユーザーに対する比率、(3)SIMフリー端末の自社の全ユーザーに対する比率、(4)提供するエンドユーザー料金とMVNO料金の水準の4点を審査基準として採用するよう望んでおり、同日、総務省に要望書を提出したという。

「イノベーションを起こせる事業者に割当を」

さて、それでは公開討論会では、どのようなディスカッションが行われたのか。周波数割当に関する発言を中心に紹介していこう。

イー・アクセスの公開討論会の模様
(左から)イー・アクセス 代表取締役社長のエリック・ガン氏、同代表取締役会長の千本倖生氏、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授の岸博幸氏、慶應義塾大学政策・メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏、インターネット総合研究所 代表取締役所長の藤原洋氏、MM総研 代表取締役所長の中島洋氏

まず900MHz帯の重要性について夏野氏は「GSMの上り下りの周波数と協調がとれた900MHz帯は、非常にプレミアムな、まさにプラチナバンドといえる」と評価。国際ローミングの観点からだけでなく、端末の調達原価の点でも、900MHz帯の取得は大きな意味を持つという。

また、夏野氏は「スマートフォンの登場で最も変わったのは、通信産業の進化が全部シリコンバレーの企業に握られたこと。キャリアは土管になるしかない」と指摘したうえで、今後の競争政策の在り方としては「土管としてフェアな競争になっているかどうか」が大切と語った。土管としての競争で何より重要なのは、もちろん周波数である。

なお、総務省では900MHz帯と併せて、2015年から利用可能になる700MHz帯についても開設指針の検討を進めているが、夏野氏によれば「700MHz帯と900MHz帯は分けて議論すべき」だという。

では、総務省はどのような審査基準で900MHz帯を割り当てるべきなのだろうか。イー・アクセスは前述の通り、「既存大手3社 vs 新規事業者」という構図でこの議論を展開していきたい考えだが、藤原氏は「どんなにイノベーティブな会社でも既得権益者になると、イノベーションを抑えるほうに回ってしまう」と新規事業者の意義を語った。この発言を受けてガン氏は、イー・アクセスは定額制やモバイルWi-Fiルーターなどのイノベーションを起こしてきたとアピールした。

一方、イー・アクセスが総務省に審査基準として要望した4点については、「ほとんど横並びになる」と藤原氏はその有効性を疑問視。「本当にやる気があるのか。熱い思いを持っているかが重要」と語った。

審査基準のポイントとしてイノベーションを挙げたのは岸氏も同様だ。700/900MHz帯の割当では再編に伴う移行コストを負担する必要はあるものの、いわゆる電波オークションは実施されない。岸氏は「やはり今のタイミングでは日本経済のことも考えないといけない。もしオークションをやれば数兆円が入るのだから、割当を受けた事業者が設備投資をやるのは当たり前。それに加えて、プラットフォームや端末など自分の上下のレイヤでイノベーションを起こすことが求められる」と要望した。

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