社内SNSはそれこそ「当たり前」になる
――後編では、これからの企業コミュニケーションや企業ネットワークの在り方をテーマにしたいと思います。日本でも社内SNSを導入する企業が増加するなど、企業内で使われるコミュニケーションツールやコラボレーションの仕方などに大きな変化が起こりつつあるように感じていますが、ガートナーでも2011年の重要な上位10の戦略的テクノロジの1つとして「ソーシャル・コミュニケーションおよびコラボレーション」を挙げています。
田崎 プロジェクトをスムーズに進めていくには、組織の壁を越えた協力が必要ですが、そのうえで重要になるのが人と人とのリレーションです。企業組織がますますダイナミックになっていくなか、このリレーションはいっそう大切になっていますが、社内SNSなどのソーシャル・コミュニケーションは人と人を結び付けるツールとして、企業でも十分使えるようになっているということですね。以前ですと企業は、異なる部門の人たちが一緒になって共同作業する研修の場などを用意していましたが、そうした研修を実施しなくてもリレーション作りを促進していけます。
――今後、社内SNSなどのソーシャル・コミュニケーションの仕組みは多くの企業に広まっていくのでしょうか。
田崎 それこそ当たり前の世界になってくると見ています。ただ、ガートナーのユーザー調査でみると、興味があるという企業の比率は現状では20%前後です。企業のIT部門が認識する必要があるのは、若い世代とは大きなギャップがあるということです。これから入社してくる新入社員の多くは、ソーシャル・コミュニケーションを使いこなしています。こうした新しい世代が十分に活躍できるようにするためにも、企業は次のコミュニケーション環境を戦略的に考えていかなければなりません。先日の大地震において、モバイルワーカーの安否確認にTwitterが効果を発揮したという例が示唆しているように、災害対応に対する考慮も欠くことができません。
――2011年の重要な上位10の戦略的テクノロジとしては「ビデオ」も挙げられています。
田崎 すでにWeb会議やテレビ会議がかなり利用されていますが、今後もっとビデオは企業内で活用されていくことになるでしょう。
いわゆる会議だけでなく、社員トレーニングなどの1対nのコミュニケーションでの活用もどんどん増えていくと思います。ただ、そのうえでは課題もあります。企業内でリッチメディアのストリーミングを行うのに適したソリューションが日本には意外にないことです。現状では、キャッシュサーバーをあちこちに立てたりなど、どうしてもシステムが大掛かりになりがちです。P2P技術を活用すれば低コストに実現できるのですが、日本でP2P技術を活用したソリューションというと、ほとんどがサービスプロバイダー向けで、企業内に閉じた形での利用を想定したものはなかなかありません。海外では企業向けのソリューションが出てきていますので、日本でも期待したいですね。