無線LANの次世代規格「IEEE802.11be」の標準化は、2024年12月の完了が予定されている。業界団体であるWi-Fi Allianceはすでに「Wi-Fi 7」の認証名で認証プログラムの準備を始めており、2023年末から2024年初めにかけて認証プログラムがスタートする見込みだ(参考記事)。
また、ドラフト版の仕様に準拠するかたちで2022年以降、Wi-Fi 7対応チップやルーター製品の発表も相次いでおり、日本国内への導入、利用解禁への期待が日々高まっている。
この新規格の国内導入に向けては、技術的条件や、他の無線システムとの共用条件等の検討が2022年10月から本格化。2024年度にWi-Fi 7の使用を可能にすることを目指して、現在、情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会の「5.2GHz帯及び6GHz帯無線LAN作業班」で検討が行われている。
そして今回、同作業班の報告(案)がまとまった。本稿ではその要点を紹介する。なお、報告(案)ではIEEE802.11be(Wi-Fi 7)を「広帯域無線LAN」と呼んでいるが、以下、Wi-Fi 7の名称で記載する。
Wi-Fi 7とWi-Fi 6Eはどこが違う?
まず、Wi-Fi 7の特徴を整理しておこう。
Wi-Fi 7は、従来規格のWi-Fi 6まで使われてきた2.4GHz帯と5GHz帯に加えて、新たに6GHz帯の周波数帯を使う。この点は2022年から利用可能になった「Wi-Fi 6E」と同じだが、さらに複数の新機能が実装される(下図表)。
Wi-Fi 6EとWi-Fi 7の比較
1つは、チャネル帯域幅の拡張だ。従来(最大160MHz幅)の2倍に当たる320MHz幅を使った通信が可能になる。
2つめは変調多値数の拡張。Wi-Fi 6Eの1024QAMから4096QAMに増やすことで、1シンボル当たりの伝送レートが10ビットから12ビットへと1.2倍に増える。なお、この4096-QAMはオプション機能となっている。
さらに、Wi-Fi 6Eにはなかった「マルチリンク機能」が加わる。OFDMA伝送において無線通信を行う際の周波数単位であるRU(Resource Unit)を1ユーザーに複数割り当てるものだ。1ユーザー当たりの伝送レートを高速化できるほか、電波干渉を受けるRUを避けて選択することで、通信の安定性を高める効果もある。
これらの効果を重ね合わせることで、Wi-Fi 6Eと比べて大幅なスループット向上が期待できる。マルチリンク機能を3リンク(320MHz×1、160MHz×2)と想定し、チャネル帯域幅と変調多値数の効果を合わせた場合、スループットはWi-Fi 6Eの約4.8倍となる。
6GHz帯の無線LANの出力については、SPモード(Standard Power)、LPIモード(Low Power Indoor)、VLPモード(Very Low Power)の3つが規定されている。国内ではLPIモードとVLPモードが使用可能で、企業や家庭等ではLPIモードが主流として使われることが想定される。より低い電力で動作するVLPモードは、屋外での使用も可能だ。