iPhone、iPad、Android、BlackBerry等、モバイル利用の急速な進展は、日本にとどまらず世界各地で同様に見られる現象である。こうしたスマートフォン市場の拡大は目覚しく、とりわけイタリア、米国、カナダでは利用されている携帯端末の3割以上をスマートフォンが占めるというデータもある。
モバイル利用を牽引しているのは、高度化したネットワーク端末やアプリケーションだけではない。定額制データ通信の浸透もその一要因である。近年、OECD加盟国の通信事業者の多くは定額制を導入しているが、各国の主要事業者が相次いで経験しているモバイルデータトラフィックの急増は、この定額制によると考えられる。
例えば、AT&Tはこの3年間で5000%以上、O2は前年の18倍、テルストラは8カ月ごとに倍増等、多くの事業者が急激なトラフィックの増加を報告している(図表1)。この一因としてよく指摘されるのは、ごく一部のユーザーが固定の代わりにモバイルで大容量の通信を行っている可能性だ。例えば、AT&Tはモバイルデータトラフィックのうち約40%が同社スマートフォンユーザーのわずか3%によって生じているとしている。
図表1 主要移動通信事業者のトラフィックの増加状況 |
トラフィックの増加に関連し、人気の高いiPhone等を提供しているAT&TやO2 UKといった事業者のネットワーク品質に対する不満がよく聞かれるが、こうした不満は、インフラ増強の取り組みを促す一方で、事業者サイドでは、これらのユーザーがサービス品質以上に、端末の新規性やより低額な通信料金を重視した結果の現れと捉える向きもある。
さらに、通信事業者の収入の傾向変化もデータ通信サービスへの注力を後押ししている。OECD加盟国全体では、近年、移動通信サービス収入が全体としては増加傾向を示す一方、ARPUは横ばい傾向にある(図表2)。特に音声ARPUは減少傾向にあり、主軸をデータへと移行させることで収入の安定化を図ろうという動きが次世代移動通信の展開の原動力の一部だと見ることもできる。
図表2 OECD加盟国全体から見たモバイル収入の変化 |