アジャイルメディア・ネットワーク等の調査によれば、スマートフォンユーザーの位置情報サービス利用率は8割を超えるという。スマートフォンの普及拡大が進む今後、ますます位置情報サービスが人々の生活の中に浸透していくことは間違いないが、米国発のユニークなサービスが7月に上陸した。Googleマップの屋内版といえる米Micello(マイセロ)社の「Micello Indoor Maps」である。
屋内地図情報を提供中の建物にはピンが表示(左)。右は、屋内地図を表示したところ。各店舗をタップすると、その詳細情報を見ることができる。今後、BlackBerry、Windows Mobile、PC、デジタルサイネージと対応端末も広げていく予定 |
Googleマップは大変便利なサービスだが、分かるのは建物の位置まで。建物の中――ショッピングモールを例にとれば、行きたい店がどこにあるかまでは分からない。GoogleマップのマッシュアップサービスであるMicelloは、この屋内情報を補完するものだ。「人々が集まる場所は屋内にある。屋内で何が起きているのかが分かるためのプラットフォームを提供するというのが我々のコンセプト」と同社バイスプレジデントのアニル・アガワル氏は語る。
2007年8月創業のMicelloは約2年の開発期間を経て、今年1月にiPhone向けサービスを開始。5月にはAndroidにも対応した。ショッピングモールや空港、イベント会場など、7月時点で1000を超える米国内の建物の屋内地図情報を提供している。
また、この夏からは米国外での展開も始まった。まずシンガポールテレコムが同社ブランドで7月初旬からサービスを開始。アプリ公開の翌週にはiPhone、Androidともにダウンロード数でトップになったそうだ。そして日本でも7月14日~16日に東京ビッグサイトで開催されたワイヤレスジャパンで、電通国際情報サービスと共同で実証実験を実施した。
お台場ヴィーナスフォートなど都内有名ビルでサービス開始
Googleマップの便利さを建物内まで拡張する屋内位置情報サービスが、エンドユーザーに受け入れられるかどうかについては、あまり心配いらないだろう。問題は、どうやって収益化していくかだ。
Micelloの基本的なビジネスモデルは、商業施設や店舗などからプロモーション費用として対価を得ていくというものである。屋内地図には、各店舗の詳細情報も登録可能。シンガポールテレコムのサービスでは、キャンペーン情報や目的の店舗までの経路情報の提供なども行っている。さらに、例えばSNSやEコマースとの連携など、屋内地図を起点とした新サービスをパートナー企業と協力しながら生み出していきたいという。なお、独自開発の地図エディタにより、地図作成作業のほとんどは自動化されており、例えば東京ビッグサイトでもわずか4時間で屋内地図が作成できたとのこと。
今後、日本ではお台場ヴィーナスフォート、ららぽーと豊洲、秋葉原UDXなどの商業施設で、順次ベータサービスを行っていく予定だ。9月からは中国人観光客向けの試験サービスも計画している。
競合はまだ少ないものの、屋内位置情報サービスは非常に有望な分野だ。競争はこれから熾烈になってくることが予想される。そこで「スピードが肝心」と日本市場を担当する野澤裕バイスプレジデントは、急ピッチで日本での事業を立ち上げていく方針だ。
米Micello社のアニル・アガワル氏と野澤裕氏 |