信金中央金庫(以下、信金中金)とNTT東日本、およびNTT西日本の3社は2022年8月30日、業務提携を発表した。全国254の 信用金庫の中央金融機関である信金中金とNTT東西が協力することで、全国の中小企業向けにDXを推進していくという。
NTT東西と信金中央金庫の提携
現在の中小企業が抱える課題について、「DX に関わる人材が足りない」と信金中金 理事長の柴田弘之氏は指摘した。
総務省の調査によれば、DXの取り組みを「実施していない」と答えた大企業は57.7%であったのに対し、中小企業は86.2%にのぼる。特に地方部ではDXに取り組む人材が不足しており、88.1%の企業が取り組んでいないと回答している。
中小企業のDXの現状
そこで、今回の提携では全国の中小企業との関係が深い信金中金と、全国でデジタルサービスを提供しているNTT東西の協力により中小企業の課題解決と地域社会の活性化を目指す。
業務提携における骨子が、ポータルサービス「ケイエール」の普及拡大だ。ケイエールは、NTT東日本とフィンテックのスタートアップ企業であるエメラダ社が開発したサービス。中小企業向けに、資金繰りや勤怠管理、電子請求書作成といった機能を搭載している。「経営者の皆さんにエールを送りたいという思いからケイエールというサービス名をつけた」と信金中金 副理事長の須藤浩氏は語った。
ケイエールの概要
また、ケイエールには「経営相談窓口」機能も搭載されており、信金中金およびNTT東西の職員から、リモートでコンサルティングサービスを受けることが可能だという。
「ニューノーマルに対応したい、販売拡大したい、管理コストを可視化したいなどの中小企業の経営課題を、ケイエールの経営相談窓口機能を使って、我々がリモートでコンサルティングし、どういう使い方をすれば課題を解決できるかサポートしていく」とNTT東日本 代表取締役社長の澁谷直樹氏は話した。
ケイエールは2022年10月から順次、全国の信用金庫で展開を開始し、2027年3月末までの5年間で25万社への導入を目指す。中小企業と言っても幅広いが、「信用金庫の取引先に多い製造業のほか、食品やサービス業、農業などの業種もカバーしていきたい」と須藤氏は説明した。
今後の展望については、勘定系ソリューションとの連携のほか、「コロナによる物価上昇などで経営の先行き不明感は増している。こうした変化に柔軟に対応するため、ケイエールと信金中金も進化していきたい。例えば、まだ構想段階だがケイエールにメタバースを実現して、ビジネスマッチングなどを考えている」と須藤氏は語った。