ソフトバンク松本副社長「垂直統合は“良し悪し”ではなく“経済競争力”の問題」

オープンプラットフォーム端末の普及、ビジネスモデルの変化、データトラフィックの急増――。携帯電話業界が直面するこれらの問題にいち早く対面したともいえるソフトバンクモバイルは、今後どのような戦略で臨むのか。松本徹三副社長が語る。

――スマートフォンなどオープンプラットフォーム端末が日本でも広まってきました。

松本 そもそもスマートフォンの定義はいろいろあるのですが、私は「OSを搭載し、アプリを拡充できる端末」と解釈しています。高機能端末は過渡期にあり、将来的にはOSを搭載していなければ高機能とはいえなくなると思います。そうなると数年以内に端末の7~8割がスマートフォンになると予想しています。

OSにはiPhone、Android、Symbian、BlackBerry、Windows Mobileなどがありますが、このうちiPhoneとAndroidの一騎打ちになるのではないかと見ています。我々はiPhoneだけでなくAndroid端末も販売していきます。Android端末については、HTCやサムスン電子、LG電子といった海外勢のほかに、シャープや東芝など国内勢も手がけています。我々は、いい商品を作ってくれるメーカーであれば、国内であれ海外であれ積極的に採用していく方針です。

――スマートフォンが普及するなか、NTTドコモやauは、ワンセグやおサイフケータイなど日本仕様にカスタマイズすることで、通信事業者としての役割を見出そうとしています。

松本 スマートフォンのOS上に載るアプリとして提供するか、別立てのアプリとして提供するかは作り方の問題で、入れたいものはどんどん入れればいいと思います。

いずれにせよ、ワンセグやおサイフケータイは別立てで端末に組み込むものです。これからは世界中の開発者が作ったアプリがOSに載ることが主流になると私は確信しています。

――スマートフォンの普及で、従来型の携帯電話のビジネスモデルが崩れるとの見方があります。

松本 通信事業者が端末やサービスなど何から何まで作り込み、垂直統合の世界を作ることに批判的な意見もありますが、良し悪しの話ではなく、経済競争力がないことが問題です。

ですから我々は、できるだけ大きなプラットフォームで世界を相手にしていく考えです。端末も世界で売れるものでなければコストが下がりません。グローバルなOSやプラットフォーム、APIの上で、アプリを工夫すればよいのではないでしょうか。

そうなってくると、以前と比べて事業者間の差別化の範囲は狭まります。しかし、事業者が独自仕様を展開するのは誤った方向性です。アップルもグーグルも初めから世界市場を狙う発想でした。世界共通だからといって、画一的なロボットのようなものを作れというわけではなく、自社の得意分野や特殊分野で差別化すればいいと思います。

日本のメーカーも、ハードに直結したアプリの作り込みが得意です。例えば携帯のカメラでも「早撮り」「連写」といった機能で特徴を出しており、世界でも通用すると思います。

月刊テレコミュニケーション2010年7月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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