企業ネットワーク最前線

イチからわかるネットワーク時刻同期

文◎坪田弘樹(編集部) 2022.01.13

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5Gの普及等を背景に、通信ネットワークにおける時刻同期の必要性が高まっている。リアルタイムアプリの安定運用に不可欠なこの時刻同期は、どのような仕組みで実現されるのか。その基本から解説する。

時刻同期とは「NW内で同じ時刻を共有 5G基地局は誤差μ秒以下」「改札で18時に会おう」「会議は14時半から」「のぞみ331号は11:18東京発」──。私たちは常に“時刻”を共有しながら生活している。

IT/ネットワークシステムも同じだ。しかも許される誤差は圧倒的に小さく、ネットワークにつながったデバイスが正確な時刻を共有する「時刻同期」によって初めて成り立つシステムがいくつも存在する(図表1)。

 

図表1 時刻同期の利用分野

図表1 時刻同期の利用分野

 

例えば金融取引システムは、取引額や数量の履歴をそれが行われた時刻とともに正確に管理する必要がある。金融機関や企業・個人間でこの時刻がズレれば、株式取引の発注・受注も正確に行えない。不正行為の追跡も不可能になり、金融取引の透明性、信頼性も失われてしまう。

放送システムも、送信側と受信側で映像・音声の位相と時刻を合わせる同期信号によって乱れのない映像を編集し、私たちが視聴できるようにしている。インターネット動画では時折、映像と音声がズレるケースがあったりするが、テレビ放送ではまず見られない。また、身近なところでは、私たちが毎日使うPCやスマートフォンも、標準時と時計を合わせる機能を備えている。

この時刻同期の大元になる基準が世界協定時(UTC)である。UTCに9時間を足すと日本標準時になる。この日本標準時は情報通信研究機構(NICT)が決定・管理している。

時刻同期とは、ネットワークにつながった各種デバイス・装置が持つ時刻情報を、このUTCに合わせることだ。

許される誤差はどのくらい?

IT/ネットワークシステムにおいて許容できる時刻の誤差は、人間の生活単位である分・秒よりもはるかに小さい。先ほども触れた金融サービス、放送ネットワーク、5Gの3つを例に見ていこう。

EU版の金融商品取引法であるMiFIDII(金融商品市場指令。2018年施行)が定める要件はマイクロ秒(μs:100万分の1秒)以下である。放送システムにおける撮影・映像編集・配信機材等の時刻同期にも同レベルの精度が求められる。放送業界では今、SDIというビデオ信号伝送規格からIP映像伝送への移行が進んでおり、IPネットワーク上でこの高精度同期をいかにして実現するかが課題となっている。

そして、我々の生活にもっと身近なインフラであり、かつ極めて高精度な時刻同期が要求されるのが5Gネットワークだ。5G基地局同士で電波を発するタイミングを、μs以下のレベルで正確に合わせる必要がある。

なぜ5Gは「時刻」に厳しいのか

理由は、5Gでは上り通信と下り通信で同じ周波数帯を用いるTDD(時分割複信)方式を採用しているためだ。基地局間で無線フレームのタイミングを正確に合わせなければ、たちまち電波干渉が起こる。

具体的には、無線フレームの開始タイミングの誤差を、UTCに対して±1.5μs以内にする。4GのTDDでも時刻同期が必要だが、5Gではより多くの基地局を密集した状態で運用することが想定されており、安定した通信サービスを提供し続けるには、より精密な時刻同期が不可欠だ。

5Gは4Gとは異なり、通信事業者ごとに割り当てられた帯域にガードバンドが設けられていないため(図表2)、事業者間でもタイミングを合わせなければならない。ローカル5Gも同様で、ローカル5Gの基地局同士、そして通信事業者の5G基地局とも同期制御が必要になる。

 

図表2 相互変調歪みによる干渉−TDDの場合

図表2 相互変調歪みによる干渉−TDDの場合

 

また、超低遅延・高信頼通信を特徴とする5Gでは、基地局間の相対時刻誤差を65ナノ秒(ns:10億分の1秒)以内に抑えなければならない要件も出てきている。

 

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