通信事業者はこれまで以上にプラットフォーマーとしての立ち位置を強めていくだろう。
ネットワークを構築して運用するという、通信事業者にしかできなかった機能を他のプレイヤーがやり始めている。少し上のレイヤーに「オーケストレーター」と言われる領域があるが、これも通信事業者だけでなく、ハイパースケーラーが手掛けることができる。
オーケストレーターとは、様々なネットワークができ、それを使う人も使い方も多様化するなかで、インフラやソフトウェア、サービスも含めて構築・運用を自動化する機能、役割のことだ。
情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主席研究員の岸田重行氏。
1997年に情報通信総合研究所に入社。専門分野はモバイル通信全般とその周辺領域
例えば、ドイツテレコムがMWC2021で「オーケストレーターを目指す」と打ち出したのは、通信事業者が自身のDXを進めるための1つの方向性と言える。通信事業者の多くがオーケストレーター機能を持とうとするだろう。
このビジョンは、NTTグループのIOWN構想とかなり似ている。IOWNでは、ICTリソースの全体調和を実現する機能を「コグニティブ・ファウンデーション※」と呼んでいるが、ドイツテレコムが言う「オーケストレーター」はまさにそれだ。こうした動きが世界中で始まる。理由は、通信事業者がやらなければ、クラウド事業者がやるからだ。放っておけば、通信事業者の位置づけは相対的に軽くなってしまう。
※コグニティブ・ファウンデーション
クラウド、エッジ、ネットワーク、端末まで含めた様々なICTリソースを最適に制御し、ユーザーニーズに合うソリューションを提供する仕組みのこと