危険を伴う鉄塔の点検作業へのドローン活用が進んでいる(写真はNTTドコモ提供)
いつでもどこでもつながる携帯電話。この「当たり前」を維持するため、通信事業者はインフラ設備の保守点検に多くの時間と労力をかけている。
携帯電話がつながるうえで欠かせないインフラ設備の1つが、基地局だ。スマートフォンから受け取った電波を信号に変換し、光ケーブルを通じて交換局へ送る「電波の橋渡し」という重要な役割を担っている。
この基地局には様々な種類がある。なかでも半径3~6kmと最も広範囲に電波を届けられるのが、鉄塔に設置された基地局だ。山間部や郊外、高速道路沿いなど、通信事業者は基地局用の鉄塔を数多く建設している。
鉄塔には無線装置やバッテリー、アンテナが搭載されており、高さは30m、ものによっては50mにもなる。日夜、風雨にさらされるため、年月の経過とともに表面の塗装がはがれ、錆が発生する。錆による腐食が進むと劣化につながることから、定期的な点検作業が不可欠だ。各社とも数年~10年に1回、海水に含まれる塩分の付着で錆が進みやすい海岸沿いの鉄塔については、より高い頻度で点検作業を実施している。
従来の点検作業では、作業員が現地に出向いて鉄塔を昇り、錆の発生箇所を撮影し、その画像を基に劣化度合いを判断していた。
しかし、高所での作業は作業員が転落したり、物品が落下するなどの危険と隣り合わせだ。作業員の高齢化が進み、少子化で若手作業員を確保することも難しい。そこで通信事業者各社は、点検作業のDX化に取り組んでいる。