――ゼットスケーラーはクラウドセキュリティの先駆者として10年以上にわたり、この市場をリードしてきました。新型コロナをきっかけに、クラウドへの移行はさらに加速しており、業績も大変好調なのではないですか。
金田 おかげさまで、堅調に推移しています。我々の会計年度は8月から7月ですが、第3四半期(2021年2月~4月)の売上は、前年と比べてグローバル全体で60%成長しました。
我々のプラットフォーム上で処理しているトランザクション数も急増し続けています。20カ月毎に倍増しており、最近の1日あたりのトランザクション数は1600 億。これはグーグルの1日あたりの検索数の20倍以上です。
――コロナにより、企業のITインフラに大きな変革が起きていることが、これらの数字からも分かります。
金田 コロナの影響で在宅勤務が普及したことは、確かに大きな加速要因です。しかし、そもそものトリガーはクラウドです。
――クラウドへの移行は必然であり、コロナはその時計の針が進むのを早めただけ、ということですか。
金田 そうです。この不可逆な流れに沿って変革していこうというモチベーションを高めたのがコロナだと認識しています。
多くのお客様が今、ゼットスケーラーのクラウドセキュリティを用いて、従来型の境界防御からゼロトラストへのシフトを始めています。ニューノーマルな働き方を支えるため、場所に制約を受けずに生産性を確保でき、そしてユーザーに対して透過的なセキュリティを提供できるクラウドベースのインフラが望まれているからです。
――クラウドシフトの遅れが指摘されてきた日本の状況はどうですか。
金田 私が統括する日本/アジアの投資は今、非常に活発化しています。昨年12月に私が入社してからこの5カ月間のトランスフォーメーションや体制強化により、日本/アジア地域は3桁成長、日本の売上は上半期と比べて約倍増しました。
――どのような体制強化を行っているのでしょうか。
金田 お客様のデジタル変革のカスタマージャーニーや中長期視点に立ったネットワークセキュリティのハイレベルデザインとそのPoV(Proof of Value:価値実証)をしっかりサポートできるよう、私は日本/アジアの体制強化に力を注いできました。
お客様が今、一番欲しているのは「How」です。従来型から次世代型のインフラへ、どう移行していけばいいのかを悩まれています。
そこで、ゼットスケーラーがそのアドバイザリー的な役割も果たせるように、体制強化をこの5カ月間チームと進めてきたのです。我々は間接販売モデルのため、従来はお客様と直接やりとりする機会が少なかったのですが、ハイタッチでお客様の意思決定者を直接支援するため、営業の人員などを増やしています。
日本の売上が急拡大したのは、この「How」に着眼した体制強化が奏功したからです。
3つのシフトを同時並行で――「How」が今一番求められているということは、どのインフラを変革しなければならないのか、「What」についての理解は十分進んでいるということですか。
金田 デジタル変革を実現できるか否か─。それが、企業の生命線であることは多くの方が認識されています。
ただ、そのためのインフラ変革については、「企業モデルの変革の後追いで考えればいい」というところが過去にはあったと思います。しかし、企業モデルの変革とインフラの変革をセットで進めることの重要性についても、かなり認識されてきました。
デジタル変革を実現するためには、クラウドシフトという不可逆の流れに沿って、アプリケーション、ネットワーク、セキュリティの3つを並行して順次クラウドへ移行していく必要があります。こうした意識が非常に多くの企業で醸成されてきていると感じています。
我々は、この3つのトランスフォーメーションを次の言葉で説明しています。1つめのApplication Transformationは「データセンターはクラウドへ」、2つめのNetwork Transformationは「インターネットが企業ネットワークへ」、そして3つめのSecurity Transformationは「場所に依存しないセキュリティへ」です。
CxOレベルのお客様のほとんどは、この3つのトランスフォーメーションに関する説明資料を見た瞬間、「そうだね」と同意されます。
――多くのCxOは、何を変革しなければならないのかを、すでにしっかり理解していると。
金田 ええ、だから今、最大の論点となっているのが、どう実現していくのかの「How」の部分なのです。
従来型のインフラでは、オンプレミスにユーザーやデータを集約し、そしてアクセスできるネットワークを構築すればよかったのに対して、デジタル変革ではクラウドをフル活用するための場所に依存しないアクセシビリティとゼロトラストモデルに準じたセキュリティアーキテクチャが重要です。
そのためには、端末や認証、セキュリティ、ネットワークインフラといったサイロに落とし込んだ、今までの個別最適での実装とは、真逆のアプローチが必要です。どのようにクラウドを使っていくのか、とるべきリスクは何か、クラウドで何を成すかといった観点において、それぞれの部門が同じベクトルを向いて、クラウドベースの基盤構築に向けたマイルストーンを作成していかなければなりません。
そういった背景から、デジタル変革を真に目指す組織においては、機能がどう、スペックがどうといった観点ではなく、自社環境においてどのような手順で移行すれば、企業の戦略に沿ったインフラに到達できるのか、その「How」をベンダー側に求めているのです。