「CATV」から「地域DXの担い手」へ、日本ケーブルテレビ連盟 渡辺克也理事長

昨年6月、日本ケーブルテレビ連盟の理事長に就任した渡辺克也氏は今、2030年に向けたビジョン作りに注力する。目指すのは、「CATV」から「地域DXの担い手」への変革だ。ローカル5Gという新しい強力な武器も活用しながら、地域のスマートシティ化などに貢献していくと意気込む。


――ケーブルテレビの名前の通り、「有線放送」からスタートしたCATV事業者ですが、世の中が変化していくなか、様々な変革を遂げてきました。

渡辺 ご承知の通り、ケーブルテレビは難視聴対策として始まりました。最初に起きた大きな変化は1980年代のスペース・ケーブルネット、都市型ケーブルテレビ等による多チャンネルサービスでしたが、最も大きな変化はインターネットです。1990年代のインターネットの登場を受けて、ケーブルテレビでもインターネットサービスの提供を開始しました。当時は、放送・インターネット・固定電話の3つを合わせて「トリプルプレイ」と言っていましたね。

今、ケーブルテレビの産業規模は、約1兆3000億円ありますが、その約半分が「通信関係」となっています。

さらに現在は、地域BWA、ローカル5G、MVNOなどの無線通信事業にも取り組んでおり、「ケーブルテレビ」だけにとどまることなく、無線を含めた総合通信事業者としての色彩がいっそう強まっています。

日本ケーブルテレビ連盟 理事長 渡辺克也氏

――時代の変化とともに、その役割を拡大してきたと言えますが、今後はさらにどこを目指すのでしょうか。

渡辺 私が日本ケーブルテレビ連盟の理事長に着任したのは昨年6月、新型コロナの感染拡大の真っ只中のことでした。着任後訪れた地域ではケーブルテレビへの期待はこれまで以上に高まっており、実際、CATV事業者への引き合いは増えています。

1つは、遠隔教育向けのインフラをはじめとする教育分野のニーズです。地元密着の事業者であること、第三セクターの事業者が多いこと、といったケーブルテレビの強みを活かし、自治体向けに多くのサービスを提供しています。

もう1つの要因は、巣ごもり需要です。CATV事業者は、Netflix等のOTTと提携してサービス提供を行っており、家庭でケーブルテレビやネット配信動画を楽しむ方の増加に対応しています。また、テレワークやリモート授業等が進んだことにより家庭内のネット環境整備の需要も増えました。

コロナ禍の現在、「移動できない社会」を強いられていますが、これを契機にまさに今、移動しなくても様々なことが行える「移動しなくていい社会」が実現しようとしています。この「移動しなくていい社会」の到来は、ある意味、私達にとって大きなチャンスであり、CATV事業者に期待される役割も変わってくると考えています。

そこで今、日本ケーブルテレビ連盟では、「10年先を見据えてケーブルテレビの将来について議論しよう」と、2030年に向けたビジョンの策定作業を進めており、6月にまとめる予定です。

月刊テレコミュニケーション2021年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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渡辺克也(わたなべ・かつや)氏

1961年12月生まれ。84年3月に慶應義塾大学 工学部を卒業後、4月に郵政省(現総務省)に入省。2015年7月総合通信基盤局 電波部長、2017年7月総合通信基盤局長、2018年7月総務審議官などを歴任。2020年6月に日本ケーブルテレビ連盟理事長に就任

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