1本の幹線に複数規格が混在可能にこうした中で、産業用イーサネット自体も進化している。
次世代規格TSN(Time-SensitiveNetworking)は、イーサネットの通信帯域を時分割し、設定した通信フレームの優先度に応じて通信帯域を制御する技術だ。
「CC-Link IE TSN」は、TSNの持つ特徴を産業用ネットワーク向けにいち早く取り込み、2018年11月に仕様公開された。
CC-Link IE TSNの最大の特徴が、時分割でリアルタイム性を実現することで複数の異なるネットワークの混在も可能となる点だ。「CC-Link IE TSNと他のプロトコルが時間帯を区切り、同一幹線上で混在できるので、従来は別々のネットワークに分かれていたI/O制御やモーション制御とTCP/IP通信を統合することも可能。OTとITの融合を実現することができる」とCC-Link協会 テクニカル部会長の長島勝氏は話す(図表2)。
図表2 「CC-Link IE TSN」のイメージ
また、ネットワークに接続した機器の時刻を同期させることで通信フレームを双方向に同時送信する。通信周期が従来規格より大幅に短縮され、高速・高精度な制御が可能になる。
ただ、OTとITを融合し、製造業における多彩なアプリケーションの活用が可能になる一方、外部からの攻撃に対するセキュリティ対策がますます重要になる。CC-Link協会では「パートナー企業と連携し、CC-Link IE TSNを安心してご使用いただけるセキュリティ環境構築のためのガイドライン策定を進めている」(事務局長の川副真生氏)という。
CC-Link IE以外では、PROFINETがTSNに対応した仕様「PROFINETover TSN」を公開している。
PROFINETは、PI(PROFIBUS&PROFINET International)が開発、普及を進めている産業用イーサネットで、独シーメンスなどのサポートを得て、海外で高いシェアを持つ。
TSNに対応する利点として、日本プロフィバス協会の元吉伸一氏は、異なる産業用イーサネットの共存に加えて、「OTで重要なモーション制御に必要なデターミニスティック(確定)性をIEC規格で実現できること」を挙げる。
PROFINETは物理層やデータリンク層だけでなく、ネットワーク層も標準イーサネットに対応した汎用型であり、データリンク層にTSNを付加するだけで対応できる点も強みだという(図表3)。
図表3 「PROFINET over TSN」のイメージ