IDC Japanの調査・予測では、2020年時点での「産業分野向け5G関連IT市場」の規模は数十億円。2027年には2106億円まで拡大する見込みだ。なお、これはITインフラとソフトウェア、サービス支出の合計額であり、5Gによって創出されるサービス、通信サービスや端末・モジュールに関する支出は含まれない。ローカル5Gあるいは通信事業者の“パブリック5G”を活用したITシステムに対する支出額を算出したものだという。
国内産業向け5G関連IT市場規模の予測
パブリック5G/ローカル5Gともにまだ市場の黎明期にあるが、この調査を担当したリサーチマネージャーの小野陽子氏はこの1年間にも、産業分野における5G導入には多くの変化が見られたと話した。
ローカル5Gベンダーが「ミリ波は意外と使える」
真っ先に挙げたのが、2020年12月に実施された「屋外使用可のSub-6帯ローカル5Gの制度化」の影響である。これにより「ローカル5Gを提供するベンダーが安心してビジネスができる」環境ができた。実証実験の数も順調に増えている。
アンカーバンドのLTEが不要なスタンドアロン(SA)構成が可能になったことも大きな要素だ。「産業分野における5Gの本命はSA。2022年から実導入が始まるという共通認識ができたことで、ベンダーは2022年をターゲットに製品・ソリューションが開発できる」と、市場拡大の後押し要因に挙げた。
もう1つ強調したのが、ミリ波(28GHz帯)に対するベンダーの認識が変化したことだ。「実証実験を通してベンダーの気付きとして大きかったのが、ミリ波の可能性。活用するのは難しいが、用途を限定すれば意外と使えるという声が多かった」
ミリ波は直進性が高く、人や壁等の障害物、降雨による減衰が大きいのが難点だが、反面、広い帯域幅を活かした超高速通信が可能だ。位置が固定されたデバイスの通信や、見通しのよい環境での使用などに用途を限定することで、「ベンダーは、ミリ波活用の可能性を見出しつつある」とした。
一方、5G対応デバイスの種類・数の不足は依然として課題であり、ユーザーの選択肢は少ない。これについては、2~3年程度をかけて徐々に解消されていくと見通しを述べた。