オープンソース活用も後押しこの動きは今後間違いなく加速する。背景にあるのは、キャリアインフラに対するニーズの変化だ。
AT&Tは先述のDrive Nets採用の背景として、「新型コロナウィルスのパンデミックにより、インフラストラクチャを柔軟にスケーリングし、5Gの急激な需要に対応するという喫緊のニーズが明らかになった」ことを挙げている。IoT/AIサービスの普及等も相まって、多様な通信ニーズに対処するには仮想化・自動化が避けられず、その前提としてディスアグリゲーション型ネットワークの必要性はますます高まるはずだ。インフラコストの低廉化・最適化も喫緊の課題である。
一方、ベンダー側の体制も整ってきている。ハードとソフトを分離すれば当然、障害時の原因切り分けや復旧が難しくなるが、この課題を解消するための取り組みが進んでいる。
“ソフトとハードを自由自在に組み替えられる”のがディスアグリゲーションの理想形だが、当初は確実に安定して動く“推奨構成”で始め、少しずつそのメリットを享受していくのが現実解になるだろう。そうしたアプローチをしやすくするため、TIPはソフト/ハードの認定を開始すると同時に、検証環境の拡充も進めている。2020年には日本でもKDDIと協力してTI PCommunity Labを設立。用途・目的に応じて各種のホワイトボックス装置、ネットワークOSを試せる環境を用意している。
オープンソースの活用を後押しする取り組みも始まっている。
選択肢を広げるうえでオープンソースは有用だが、懸念されるのが、機能不足や保守メンテナンスの難しさだ。例えば、データセンターでよく使われるネットワークOSに「SONiC」があるが、ACCESS 国内IP Infusion営業担当シニアマネージャーの深川功一氏によれば、「キャリアが使いこなそうとすると機能が足りない」。そこで、保守に加えて、「キャリア網で使用するのに不足する機能を追加している」。また、実績を重視する事業者なら先述のDANOS-Vyattaをサポート付きで提供するといったように、複数の選択肢を用意している。同様の動きは他にもあり、例えばホワイトボックスメーカーのEdgecore Networksも、商用サポートを付けた「ecSONiC」を提供している。
ACCESS 取締役兼CTO/IP Infusion 会長の植松理昌氏(左)と、
国内IP Infusion 営業担当シニアマネージャーの深川功一氏
クラウドと同じアプリをエッジに展開しようとする場合、エッジクラウドを運用するのにこうした商用サポート付きSONiCは有用な選択肢となろう。
IP Infusionは商用OSのOcNOSを提供しているが、「逆にお客様がOcNOSにロックインされても意味がない。間口を広げるため、オープンソースも含めてポートフォリオを広げている」と植松氏は話す。TIP仕様準拠の製品の拡充とともに、こうしたサポートが広がることで、ディスアグリゲーションに取り組みやすい土壌が作られていくはずだ。