<特集>ローカル5G中間報告<ローカル5G導入最前線#5>富士通「28GHz+2.5GHzの運用はノウハウが必要」

国内各地でローカル5Gの導入が始まった。先行する事業者はローカル5Gにどのような期待を抱き、実際にシステム構築・運用を進めるなかでどんな課題に直面しているのか。第5回は、国内初の商用ローカル5G免許を取得した富士通の取り組みを紹介する。

国内初となる商用のローカル5G無線局(基地局、陸上移動局)免許を3月27日に取得した富士通は、神奈川県川崎市の「富士通新川崎テクノロジースクエア」でローカル5Gの運用を開始している。

システム構成は、2.5GHz帯のLTEをアンカーバンドとしたNSA型で、約2万8000平方メートルに及ぶ敷地内の複数箇所を5Gエリア化している。「免許は複数の基地局で申請し、取得した。コアネットワーク設備は1つで、複数の基地局を運営している」と、未来ネットワーク統括部5G/ICTビジネス推進室 室長の神田隆史氏は話す。なお、本システムは富士通製の設備と他社製品の混在で構築しているという。

複数の基地局を申請した理由は、「28GHz帯の電波は飛ばないので、広いエリアをカバーするには多くの基地局が必要になる。大規模な施設でローカル5Gを実用化する場合に、この環境を模擬できるようにするため」だ。

富士通新川崎テクノロジースクエア内に設置されているローカル5Gシステム

富士通新川崎テクノロジースクエア内に設置されているローカル5Gシステム。
左側の白い平面型のアンテナが5Gアンテナ。右のラック内でLTE基地局、
5G基地局、LTE/5Gコア設備が稼働している

防犯カメラで“商用運用”“商用免許”で運営しているこのローカル5Gシステムは現在、監視カメラで撮影した高精細映像データの伝送に用いられている(図表1)。

図表1 富士通が運用を開始したローカル5Gシステム

図表1 富士通が運用を開始したローカル5Gシステム

5Gデータ通信端末(陸上移動局)と高精細カメラをイーサネットで接続。ローカル5Gで施設内のサーバーに映像を送り、人の動作を解析するAIが不審な行動を検知する。このカメラと陸上移動局、基地局がそれぞれ、新川崎テクノロジースクエア内の複数箇所に設置されている。

なお、本システムでは映像データの収集用にアップリンクでローカル5Gを使っているという。

セキュリティシステムでローカル5Gの活用を始めた理由は、応用範囲が広いことにあると神田氏は説明する。「監視カメラシステムが欲しいという人は少ないが、高精細映像を使いたいというニーズは非常に多い」からだ。

ローカル5Gのユースケースとして、例えばスタジアムのスポーツ中継映像やライブハウスでのイベント映像を配信サーバーへ伝送したり、工場において作業員や機械の稼働状況を遠隔からモニタリングするといった用途が考えられている。セキュリティカメラの映像伝送を安定的に行うためのエリア設計や電波調整等のノウハウを、そうした多様なユースケースに活かそうという狙いだ。

月刊テレコミュニケーション2020年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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