家庭用エネルギー消費は、自由化の影響で都市ガスや電気がシェアを伸ばす一方、LPガスは減少傾向にある。それでも今なお約2400万世帯が給湯器やコンロ、ヒーターなどにLPガスを利用している。
一般家庭にLPガスを販売するLPガス事業者は、国内に約1万9000社。家族経営から大企業まで規模は様々だが、「人手不足」は業界全体に共通する課題だ。
ガスメーターの検針員やガスボンベの配送ドライバーの高齢化が進み、新たななり手も少ないため、人員の確保が難しくなっている。
その解決策として、自動検針などICT活用による業務改革が迫られているが、実はLPガス業界における自動検針の歴史は古い。1990年頃からノーリンギング通信サービス(加入電話の無鳴動接続サービス)を用いた方式の導入が本格化したが、インターネットの普及に伴い、加入電話をISDNや光回線に切り替える世帯が増加。代替策として無線による自動検針が登場した。
具体的には、検針データを有線や特定小電力無線でゲートウェイに集約し、3G回線やPHSを介してLPガス事業者の集中監視センターなどに送信する仕組みだ。しかし、電話回線による方式と比べるとコストがかかるうえ、センターを自前で持たなければならない。中小事業者にとっては負担が大きく、普及は全体の25%程度にとどまっている。
そうしたなか、新たに注目を集めているのが、LPWA(Low Power Wide Area)を利用した自動検針システムだ。
低消費電力のLPWAは、デバイスによっては電池1個で約10年間持たせることができるため、電源を確保しづらい場所に設置されていることが多いLPガスメーターの通信に適している。
計量器専門メーカー・アズビル金門の「ガスミエール」は、指針値や保安情報といったガスメーターから集まるデータをLTE Cat.M1(LTE-M)を採用した無線通信端末を用いて自動的にIoTプラットフォームに集約。様々なアプリケーションを通じて、配送効率化など、LPガス事業者の事業改革を実現するクラウドサービスだ(図表1)。
図表1 「ガスミエール」の接続イメージ
アズビル金門ではいくつかのLPWA規格を検討したが、主に2つの理由からLTE-Mを選んだという。
1つめが、双方向通信機能を備えることだ。
LPガスは、利用者が外出先で消し忘れに気付いたり、消したかどうか不安になることがしばしばある。LTE-Mは双方向通信が可能なため、利用者がLPガス事業者に連絡し、遠隔から遮断することができる。
2つめが、上り/下りとも最大1MbpsとLPWAとしては比較的高速な通信を行えることだ。
双方向かつ高速な通信により、FOTA(無線によるソフトウェア更新)にも対応する。「無線通信端末のソフトウェア機能の拡張や修正を行う際、遠隔から書き換えられるので、通信ボードの取り外しや交換の手間が省け、保守作業の負荷を軽減できる」と取締役執行役員 SMaaS事業部長の奥野啓道氏は話す。
アズビル金門 取締役執行役員 SMaaS事業部長 奥野啓道氏
また、ガスミエールは、アズビル金門製の膜式スマートメーター「K-SMα」と接続できるほか、無線通信端末「外付けタイプ」を用意しているので既設メーターとの接続も可能。さらに「K-SMα」は、無線通信端末「収納タイプ」によりメーターとスマートな一体構造を実現しており、設置した際の見た目やユーザーの管理運用にも大きなメリットがあることも特徴の1つである。