[5G思考#8]テラドローン – 次の産業革命は「空白地帯」から始まる

ドローン×5Gによる空の産業革命は“始まり”に過ぎない。陸上など別の領域へと革命は広がる。空が革命の発火点になるのは“民主化”の進んでいないインフラ空白地帯だから。ギャップにこそチャンスはある。

次の産業革命は空から始まる――。そう語るのはテラドローンで事業戦略本部長/UTM事業責任者を務める金子洋介氏だ。

テラドローン事業戦略本部長/UTM事業責任者 金子洋介氏
テラドローン事業戦略本部長/UTM事業責任者 金子洋介氏


テラドローンは2016年に設立された、ドローンサービスを提供する日本発のスタートアップ。調査会社DRONEIIの「ドローンサービス企業世界ランキング2019」において、産業用ドローンサービス企業として世界2位の評価を得ているリーディングカンパニーだ。

テラドローンでは、遠くない将来、空のモビリティの「民主化」が起こると予想している。ここで言う民主化とは、コモディティ化や大衆化とも言い換えられる。

現在、私たちは陸上では自転車や自家用車、バス、電車など多様な手段を選んで自由に移動できる。一方、空はどうか。航空機を操縦できるのは、高度に訓練されたパイロットだけだ。私たちは空港へ早めに出向き、決められたフライト時間まで待たなければならない。

しかし、「すべてが電動化、自動化され、誰でも簡単に空飛ぶクルマなどの空のモビリティを使える時代が来る。これが空の民主化だ。今まで航空業界の人たちが仕切っていた世界に、テクノロジー企業も参入してプレイヤーも変わっていく」と金子氏は語る。

中国でレベル4の商用化空の民主化という革命は、すでに始まっている。テラドローンが資本業務提携する中国のアントワーク社は2019年12月、商用目的でのレベル4(有人地帯での目視外飛行)を世界で初めて実現した。中国・杭州で航空局の許可のもと、スターバックスやKFCなどの宅配をドローンで行っている。各店舗から商品を無人搬送車で商品をドローンが設置されているハブ基地まで運搬。その後は、住宅地にある基地までドローンで運ぶ。基地から顧客の元へも無人搬送車で配達可能だが、実際には顧客が最寄りの基地まで取りに来るハイブリッドモデルが基本となっているという。「現在は1日100件ほど利用されている」そうだ。

中国・杭州ではスターバックスやKFCなどの商品をエンドツーエンドで宅配してもらうことが可能だ
中国・杭州ではスターバックスやKFCなどの商品をエンドツーエンドで宅配してもらうことが可能だ
出典:Antwork Robotics公式動画「KFC burgers delivered by Antwork robots for the first time」

コロナウィルス対策としても2月から活躍し始めた。最も深刻な被害を受けている省の1つである浙江省で医療物資の配達に使われている。ドローンで無人配送することで、二次汚染を防ぎながら、物流を効率化している。

この空の民主化の実現にあたっては、5Gも重要な役割を担う。国内では現状、基本的にWi-Fiを用いて、地上200m以下の空域を目視確認できる範囲で航行している。

「目視外で飛行するには、映像等でリアルタイムに状況をトラッキングする必要がある。このため、広域ネットワークとセットで考えなければならないが、ドローンが撮った映像をセンターで解析してドローン側にその結果を返すというインタラクティブなコミュニケーションを行うには、4Gの遅延性能や通信容量だと正直辛いところがある」と金子氏は指摘する。

実際、アントワーク社の事例でも一部で5Gが活用されている。

月刊テレコミュニケーション2020年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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