昨今、生産年齢人口の減少や厳しい地方財政を背景に、全国の政令指定都市や中核都市では、区役所や支所・出張所で行っていた窓口業務を本庁や合同庁舎に集約する動きが見られる。
自治体にとっては業務効率化を実現できる反面、地域住民は利便性の低下が避けられない。そこで、業務効率化と住民サービスの維持・向上の両立を目的として、テレビ電話を活用した窓口業務の遠隔化を検討する自治体が増えている。
しかし、テレビ電話による遠隔相談システムは口頭での説明にとどまり、書類の作成などについては現地の職員がサポートしなければならないため、手続きがかえって煩雑になるという指摘もある。
そうした中でOKIが2019年12月に販売を開始した「相談上手」は、口頭での説明に加えて、住民の手元にある書類の確認や記入支援といった窓口業務を離れた場所からでもスムーズに行える、従来にはない遠隔相談システムとなっている。
図表 「相談上手」システム構成イメージ
職員に均等に業務を配分押すだけ、置くだけ、話すだけ――。相談上手は、ITリテラシーに関係なく誰でも簡単に使いこなせる点を特徴とする。
住民は、最寄りの区役所や支所に設置されたディスプレイから相談したい窓口を選びタッチするだけで、本庁の担当職員とテレビ電話による通話を始めることができる。職員との会話はヘッドホンなどを装着する必要がなく、ハンズフリーで行える。
Webカメラやディスプレイ、マイク・スピーカーは、オフィス向けのビデオ会議システムと同じものが使われており、実際に窓口で対面しているような感覚で会話をすることができる。
住民が持参した書類は、ドキュメントスキャナーの所定の位置に置くだけで、職員側のディスプレイに表示される。職員は映像を通じて本人確認書類や必要書類の内容を確認したり、住民が書類に記入している様子を見ながら、その場でアドバイスすることが可能だ。
一般的なドキュメントスキャナーは書画カメラを用いているが、相談上手はネットワークカメラを採用している。「書画カメラは撮影した映像をいったん映像信号に変換してから送信するので遅延が発生する。これに対し、ネットワークカメラはリアルタイムに映像を映し出すため、無駄な時間が発生せず、サービス品質も向上する」とOKI 情報通信事業本部 IoTプラットフォーム事業部 オフィスコミュニケーションSE部 SE第四チームの丸田雄介氏は話す。
OKI 情報通信事業本部 IoTプラットフォーム事業部
オフィスコミュニケーションSE部 SE第四チーム 丸田雄介氏
職員の負荷をかけないように様々な工夫がされているのも相談上手の特徴だ。
住民からの着信があるとパトランプやブザーで通知され、職員は対応の準備ができ次第、ディスプレイの「応答」をクリックするとテレビ電話が接続される。
常に待機する必要はなく、着信があったときに対応すればよいため、その他の時間は日常業務にあてることができる。
また、PCに入っている資料を住民に見せたり、ドキュメントスキャナーやプリンターを遠隔操作するといった作業は、ディスプレイ右下のアイコンをマウスでクリックするだけで直感的に行える。
職員の操作画面には操作ボタンも分かりやすく表示されるので、
PCに不慣れな職員も直感的な操作を行える(画像提供:OKI)
窓口業務では、拠点ごとに相談件数にばらつきが生じたり、特定の職員に業務が偏るといった課題がある。この点についても、相談上手はコールセンターで使われているACD(オートマティック・コール・ディストリビューション:着信呼自動分配装置)の採用により、住民からの着信を職員に均等に自動分配する仕組みを実現している。「空き時間の長い職員から優先的に割り当てられることで、職員の業務負荷が平準化される」と丸田氏は説明する。
自治体の窓口業務は個人情報を扱うだけに、セキュリティの確保も重要になる。相談上手は、遠隔相談の終了時に説明資料が自動的に削除され、住民側のPCにもデータが一切残らない。また、住民と職員をつなぐネットワークには閉域網を用いることで、情報漏えいなどのリスクも低減されるという。