データセンター(DC)ネットワークで先行してきたオープン化の潮流をキャリアネットワークにも適用する取り組みが近年進んでいる。
これを推進するのが、SDN標準化団体のONF(Open Networking Foundation)や、キャリアインフラの革新を目指す非営利組織TIP(Telecom Infra Project)だ。
NTTもこれらに加わっている。
ONFで伝送網のオープン化/機能分離(ディスアグリゲーション)を目指すプロジェクトをNTTコミュニケーションズが主導。NTTネットワークサービスシステム研究所(NS研)はTIP内で、光伝送・パケット転送のオープン化を推進するOOPT(OpenOptical&Packet Transport)に参画している。
目的は、ネットワーク設備のマルチベンダー化だ。コアルーターや光伝送装置のハードウェアとソフトウェアを分離。汎用製品とオープンソースソフトウェア(OSS)等を組み合わせて同等の機能を実現することで、ベンダーロックインを回避し、個別の更新・追加を可能にする。
キャリア要件を満たすSDNこのオープン化/機能分離はこれまで、光伝送とパケット転送の領域で別々に進行してきた。それを連携させ、伝送・転送網の統合制御を実現するプロジェクトがTIPで進んでいる。2018年10月、NS研とテレフォニカが共同で設立した「CANDI(Converged Architectures for Network Disaggregation & Integration)」だ。その目的について、NS研ネットワーク伝送基盤プロジェクト IPフロー制御装置DP 主任研究員の名小路雅也氏は、「転送と伝送の両方を俯瞰し、制御機能を密に連携させる。それをオープンなインターフェースを用いて行う」と話す。
もう1つ、CANDIには特徴的な点がある。「通信キャリアが考えるユースケースに基づいてアーキテクチャを策定し、検証する」と語るのは、研究主任の福田亜紀氏だ。
例えば、従来のSDN技術では制御機能がコントローラーに一極集中しているため、もしコントローラーが停止したり、転送装置との間が遮断されるとデータ転送が止まってしまう。これではキャリア網で要求される信頼性を満たすのは難しい。
一方、NS研が2014年から開発を続け、CANDIの実験でも用いている基盤技術「MSF」(Multi Service Fabric)は、制御機能を分散配備するアーキテクチャを採用。上記の場合でもデータ転送は止まらない。
またNS研では、専用線サービスの制御に用いるプロトコルなど、キャリアに必須の機能を持つホワイトボックススイッチ(WBS)用のネットワークOSも開発。DCネットワーク領域で適用されてきたネットワークOSでは不足する機能を補完した。「Beluganos」と名付けたこのOSとMSFのコントローラー機能はOSSとして公開している。
NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク伝送基盤プロジェクト IPフロー制御装置DP 主任研究員の名小路雅也氏(左)と研究主任の福田亜紀氏 |