先進国の中で最低レベルの生産性にあえいでいる日本――。その原因は何か。
「そもそも仕事への熱意がない。日本の仕事への熱意度は、Gallup社の調査によると139カ国中132位。日本では従業員の6%しか熱意をもって働いていない一方、米国は32%くらい」
こう指摘するのは、7月24日に都内で開催されたイベント「Adobe Symposium 2019」で、「エンゲージメントを重視したチーム論」と題して講演を行ったアトラエ 取締役の岡利幸氏だ。
仕事への熱意度が低く、生産性や1人当たりGDPも先進国最下位の日本
同社は求人メディア「Green」やビジネスパーソン向けマッチングアプリ「yenta」、組織改善プラットフォーム「wevox」を展開している企業。社員数はわずか57名だが、東証一部に上場しており、その時価総額は約330億円。
2019年版の「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work Institute Japan)では、従業員25~99名の小規模部門で国内1位、アジア5位を獲得している。
岡氏によれば、社員の意欲は以前にも増して、企業の競争力を左右するようになっている。その理由は、「競争優位の根幹が変わってきている」からだ。岡氏は、世界時価総額ランキングのTOP50のうち32社を日本企業が占めた30年前と比較しながら説明した。
世界時価総額ランキングTOP50社のうち32社を日本企業が占めた30年前と今の違い
「製造業が中心だった30年前は、ミスを最小化して効率的に実行するオペレーショナルエクセレンスが競争優位の根幹だった。しかし、今は創造性や革新性が求められる時代。ミスを許容しながら挑戦や変化をし続けることが競争優位につながる。このため、社員の意欲を高めて、創造性や革新性を発揮してもらうことが、より一層求められている」
すなわち、社員のエンゲージメントが高い企業が、競争優位を実現できる時代になってきているという。
エンゲージメントとモチベーションの違いとは?このエンゲージメントという言葉は最近、組織論において頻繁に耳にするようになっているが、「他のいろいろな言葉と混同されて使われている」と岡氏は指摘。類似するモチベーション、従業員満足度、ロイヤリティとの違いを説明した。
エンゲージメントと他の類似用語の違い
まずモチベーションとは、行動を起こすための動機のこと。例えば、このミッションを達成したら100万円のボーナスを支給といった施策が、モチベーションを高めることになるが、「長期的に強い組織ができるかというと、どちらかといえば短期的な話」。
次に従業員満足度とは、職場環境や給与、福利厚生などへの総合的な満足度のことだ。人が辞めにくい会社、従業員の家族にも応援される会社を目指すうえでは、この従業員満足度が重要になる。
ロイヤリティとは会社への忠誠心であり、「ある程度の犠牲をいとわない態度」を表すが、「会社が意識的に高めることは難しいかもしれない」。
一方、エンゲージメントとは、「組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、主体的に取り組めている状態」と定義できるという。
つまり、「仕事に対する意欲や士気が高まっている状態、成果やビジョンに向かって進むためのアドレナリンが出ている状態のこと」。岡氏はそう解説したうえで、「エンゲージメントが、長期的に強い組織を作る」とした。