ワイヤレス工場の切り札誕生! 製造現場IoT化のボトルネック解消

無線によるIoT化を試みる工場が増えている。しかし、無線の導入にはいくつもの課題がある。それらを一挙に解決する可能性を秘めた、無線プラットフォーム「SRF」の策定が進んでいる。

人手不足や熟練工の減少といった問題に直面する製造現場で、「デジタル化」の動きが広がっている。IoTにより工場内の各設備の稼働状況を可視化し、故障などの予兆を検知。さらに最適制御まで実現することで、生産性を向上させようというわけだ。

生産設備をつなぐネットワークは、できれば無線で構築することが望ましい。ケーブルの配線工事が不要になり、コストを削減できるからだ。また、作業員やAGV(無人搬送車)のような移動体は、そもそも無線でないと通信できない。

産業用ネットワーク機器ベンダーのHMS Industrial Networksが2017年に行った調査によれば、工場の通信における無線の割合は6%とまだ少ないが、年32%の割合で成長している。イーサネットによる有線ネットワークを上回るペースで成長しており、工場における通信手段として、無線に大きな期待が寄せられていることが分かる。

製造現場における無線の課題だが、工場で無線を運用するには、いくつかの課題がある。特に、「通信が途切れてシステムが止まるのではないか」といった通信品質への懸念が強い。

無線の通信品質が低くなりがちな理由の1つに、工場の環境は変化しやすいことが挙げられる。人やモノが頻繁に移動することで、電波が届かない不感帯が秒単位で出現・移動・消滅するからだ。工作機械の中には不規則にノイズを発するものもある。さらに月・年単位でみると、設備レイアウトの変更や、新規ラインが設立されることも珍しくない。

また、工場ではそもそも各アプリケーションに、周波数帯や空間といった無線リソースが適切に割り振られていないという問題もある。

情報通信研究機構(NICT)と製造業7社で構成される業界団体の、フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)で代表幹事 博士(工学)を務める丸橋健一氏は「例えばロボット制御のアプリケーションであれば無線にも低遅延性が求められるし、画像による製品検査の場合はデータサイズが大きいため帯域を広く取る必要がある」と解説する。

(右から)フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)事務局長の厚東肇氏、副会長の佐藤慎一氏、代表幹事 博士(工学)の丸橋健一氏
(右から)フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)事務局長の厚東肇氏、副会長の佐藤慎一氏、代表幹事 博士(工学)の丸橋健一氏

だが、このようにアプリケーションの特性に応じて無線リソースを割り当てている工場は少ない。製造現場で稼働している設備は新旧入り混じっており、無線システムも互いに独立した設定で運用されるためだ。

前述したように、そもそも製造業でIoT化が進む背景にあるのは人手不足。そのため、導入が期待されるのはロボット制御や、画像認識による品質検査の自動化など、生産性を大幅に高めるアプリケーションだ。

それが、無線システムが独立して運用されるため、「温度センサーのような送信データ量が少なく遅延も許される業務上優先度の低い設備が、無線のリソースを過剰に使い、リアルタイム性が求められるロボット制御等のリソースを潰してしまう恐れがある」(丸橋氏)。

こうした問題はすでに一部の製造現場で発生しており、今後、無線が普及すると多くの工場が同様の課題に直面する懸念がある。

月刊テレコミュニケーション2019年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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