中小企業はオンプレを選択クラウド=安いというイメージから、コスト削減を目的にクラウドPBXを検討する企業も少なくない。
先述のように工事など保守・メンテナンスのコストは減らすことはできるが、その一方、主装置を減価償却期間の6年間あるいはそれ以上使い続けた場合、資産として持つよりもサービスとして利用する方がコスト高になる。「特に中小企業はトータルコストで検討するため、最終的にオンプレミスを選択するケースが多い」とまほろば工房 代表取締役の近藤邦昭氏は述べる。
同社では、PBXを短期間だけ利用する、あるいは短期間のうちに企業規模が拡大する可能性のある企業にはクラウド型、それ以外の企業にはアプライアンス型を提案している。
アプライアンス型のIP-PBX「MAHO-PBX」は、200人以下の中小規模向けから、1000人以下の大規模向けまで規模に応じて3機種を用意する。
MAHO-PBXは、内線拡張サービス「MobileWarp」との連携により、専用アプリをインストールしたスマホをオフィスの内線電話のように使ったり、MAHO-PBXに収容された回線や外線番号、内線番号で外線の発着信を行うことができる。
MobileWarpに接続している端末間の通話はMobileWarp内で折り返すので、通話料が無料であることに加えて、災害時などにPBXがダウンしても通話は利用できる点を強みとする。
まほろば工房の「MAHO-PBX」
モバイル内線のラインナップが充実モバイル端末の利用ニーズの高まりを受けて、機能を強化する動きも見られる。
NECは7月下旬、中小企業向けビジネスホンの新機種を5年ぶりに発売する。「UNIVERGE Aspire WX」は時代の変化に合わせていくつかの機能強化を図っており、その中にはモバイルコミュニケーションに関するものも含まれる。
NEC セキュリティ・ネットワーク事業部マネージャーの若杉和徳氏は「近年、モバイル活用がますます重要になっている。エンタープライズだけでなくSMB(中堅中小企業)でも同様の傾向があり、UNIVERGE Aspire WXではモバイル活用によるコミュニケーション機能を強化した」と説明する。
NECの「UNIVERGE Aspire WX」
Aspire WXは、モバイル内線のラインナップが充実している。公衆網を使ったモバイル内線については、クラウド型で手軽に利用できる「UNIVERGE どこでも内線サービス」と、音声通話網で高品質な通話を実現する「AXモバイルリンク」から用途に合わせて選べる。他方、構内にWi-Fi環境があれば、1台のスマホで、内線通話と業務用アプリを併せて利用することができる。
また、UNIVERGE どこでも内線サービス向けのスマホアプリ「UNIVERGE ST500」は、業務への活用を促進する目的から、AndroidとiOSのUIを統一したほか、ビデオ通話機能を新たに追加した。NECではST500をモバイルコミュニケーションツールのメインアプリと位置付けており、今後プレゼンスやチャットなどの機能も追加する予定だ。
Web会議を目的とした導入もUNIVERGE Aspire WXは、UC機能も充実している。
もともと前機種の「UNIVERGE Aspire UX」から、中小企業でも手軽にUCを体験できる「エントリーUC」をコンセプトに、UC機能を訴求してきた。
UCクライアント用Webアプリケーション「UC100 for Web」では、スマホやPCの画面上にプレゼンスが表示され、電話以外にもメールやチャットなどの機能も使える。また、WebRTC技術を活用し最大8者までのWeb会議を行える「クイックビデオリンク」とも連携しており、UC100 for Webから会議を開始したり参加することができる。Aspire WXでは新たに会議予約機能として、参加者がOutlookなどのスケジュール機能から事前に会議時間を設定することが可能になる予定だ。
Aspire WXはUC機能などをオールインワンで実現する点を他社製品との差別化ポイントとしており、「電話以外の機能を目的に導入するお客様を増やしたい」と若杉氏は語る。その狙い通り、最近はビジネスホンとしてではなく、Web会議のサーバーとしてAspireを導入する企業も増えており、手応えを感じている。