複数参加で情報の質と伝達速度UP
今回、GMS店舗にはLifeSizeとセットで32インチのテレビを導入し、ホームセンター店舗にもPCとともに27インチの大型モニターをセットで導入した。これには、複数の人間が同時に会議参加することで、よりスピーディな情報共有を目指す狙いが込められている。従来のWeb会議システムでは各店舗からの参加人数は1名の場合が多かったため、「“テレビ会議には複数で参加するものだ”という意識づけを行うために、あえて全店に大型モニターを導入した」という。例えば新製品のセールスポイントなどを本部のバイヤーがテレビ会議でレクチャーし、そこにパートタイマーに至るまでの販売員を参加させれば、会議終了直後から全員が接客に役立てることができる。マネージャーのみが会議に参加し、自店に帰着後に伝言ゲームで伝えていた従来と比べ、情報の質と伝達スピードが大幅にアップした。
今回のHDテレビ会議システムの導入に際して、経営サイドでは集合会議の置き換えだけを考えていた。だが、社員がさまざまなケースで活用を始め、プラスアルファの効果がどんどん出てきている。例えば、社内セミナーでの活用だ。資格登用後研修等の社員のスキルアップを目的としたものから、受発注端末やギフト商品承りシステム機器の操作方法等の日常業務に必要なことのレクチャーまで幅広く活用している。従来は、半年または四半期に1回くらいのペースで1泊2日の日程で本社に集め、社員にさまざまなことを詰め込んでいたが、現在は1日のなかで多忙ではない時間帯に教育の時間を設けて実施できる。
取材当日は、お中元を処理する時に利用する端末の操作方法のレクチャーに利用していた |
また、今回は書画カメラも導入している。最近の実例では、弁当売り場のバイヤーが新作弁当を書画カメラで映し、盛り付け方のポイント指導に利用したという。ユニークな例としては、ティーンズ向けのショップのマネージャーが担当者会議で、各店で一番売れている商品を持って来させて、映像で見せながら売れている理由などを説明させた。売れ筋商品の情報共有ができることはもちろん、HD画質で商品の微妙な色合いや質感まで分かるため、説得力が増す。集合会議では、わざわざ売れ筋商品を持って来て説明することはなかったので、HDテレビ会議ならではの活用法といえる。
これだけ活用法が広がると、利用ニーズが殺到して運用が大変になる。だが菅原部長は、「Web会議導入時に、きちんとした運用ルールの重要性を実感した」といい、新システムの運用開始時から時間割を作成している。まず、定例会議の時間割を決め、それ以外をフリー枠にし、管理者を置いてコントロールしている。
HD対応Web会議の登場に期待
今後の拡張計画だが、現在、本社以外の店舗にはLifeSizeは1台ずつしか導入していない。だが、これだけ利用シーンが多様化してくると、増強が必要になるが、LifeSizeをもう1台ずつというのは、コスト面で難しい。そこで、Web会議の上手な活用を考えている。イオン九州では、大分・宮崎事業部というように、エリアごとの事業部制を敷いており、エリア会議も実施している。例えば、各店舗の店長やマネージャーのPCにWeb会議ソフトを入れておけば、そうしたエリア会議はWeb会議のみで実施できる。
Web会議関連では、現在はHD対応の製品ではないので、今後対応製品が登場次第、リプレースして全店舗でHDテレビ会議が利用できるようにしたい意向だ。
菅原部長は「当社は昨年度、売上高は微減だったが、営業利益は増加した。これは大幅なコスト削減が実現できた結果であり、それに関してテレビ会議導入が大きく貢献したと自負している。今後もさまざまな活用法を考え、使いこなしていきたい」と語っている。