「IoT(Internet of Things)は、件数ベースで明らかに増えてきた。あるITベンダーによれば、2016年は数十件だったIoT案件が、2017年はその5倍になったと聞いている」。こう語るのは、富士キメラ総研の第二部門主任を務める村瀬浩一氏だ。
同氏はまた、「2016年に行われていたPoC(概念実証)により、ITベンダーの中にノウハウが溜まり、IoTの具体的な効果も見えてきた。そのため、2017年からIoTビジネスが本格化している」と説明する。企業によるIoTの取り組みは、これまではPoCが中心だった。しかし、2017年からは本格導入に向けた動きが活発化しており、この流れは2018~21年へ続いていくという。
国内IoT市場全体の動向は?富士キメラ総研が2017年6月に発表した国内IoT市場調査によれば、IoT市場全体の規模は、2016年度に5532億円だったものが、5年後の2021年度には約2.5倍の1兆3806億円になる見込みだ(図表1)。
図表1 ビッグデータ・IoT関連ビジネスの国内市場(ビジネス形態別)
同調査では、IoTの市場を6つのレイヤーに分けている。6つとは、「コネクティビティ」「プラットフォーム」「アプリケーション」「システムインテグレーション」「上位サービス」「保守/運用サービス、他」。これらのレイヤーの中で、最も大きなポーションを占めるのは、システム開発を行うシステムインテグレーションであり、今後も同じ傾向が続く見通しだ。
また、2016年度から2021年度までの間で最も年平均成長率(CAGR)が高いのはコネクティビティのレイヤーで、CAGRは約27%になるというのが富士キメラ総研の見立てである。コネクティビティはモノをインターネットに接続するための第一歩であり、これからIoTの導入を進める企業や、その企業を支援するITベンダーにとって見逃せないところだ。
パッケージ提供するメーカーもコネクティビティの主要製品の1つが、「IoTルーター/IoTゲートウェイ」である。両製品を選定するうえで大前提となるのは、その製品がどのようなインターフェイスや通信サービスに対応できるかだ。
センサーや機械など、IoTルーター/ゲートウェイに接続したいIoTデバイスがWi-FiやBluetoothでデータを送信してくるのであれば、ルーター/ゲートウェイもWi-FiやBluetoothに対応している製品を、シリアル通信インターフェイスしか搭載していない工場の機械であれば、ルーター/ゲートウェイ側もそのインターフェイスに対応している製品を選択することになる。
また、ルーター/ゲートウェイに集めたデータを、有線WANや3G、LTEでクラウドなどに送信したい場合は、有線WANのポートや3G、LTEの通信モジュールを搭載した製品を選ぶことになる。LTEは、カバレッジが広く、有線ネットワークの工事が不要な手軽さもあり、最近のルーター/ゲートウェイはLTE対応が定番になっている。
とはいえ、ハードウェアのスペックで製品を差別化するのは難しい。そのため、「IoTゲートウェイのメーカーが、クラウドのプラットフォームも含めてワンパッケージのソリューションサービスを打ち出すケースがある」(富士キメラ総研・第二研究開発部門ADの辻田洋佑氏)。
例えば、IoTルーターとIoTゲートウェイの市場で高いシェアを持つサン電子は、同社のゲートウェイ「Rooster GXシリーズ」とプラットフォーム「Bacsoft IoT Platform」、3Gの通信サービスをセットにした「IoTスターターキット」を提供している。工場の機械、施設の空調機器などをRooster GXシリーズに接続すると、それらのデータは自動的にクラウドへ収集され、グラフィカルに表示できるようになる。