1.1.2 ソーシャルテクノロジーの3要件
ソーシャルテクノロジーを成立させる要件は、大きく3つあります。3つの要件は、そのWebアプリケーションがソーシャルテクノロジーかどうかを見分ける基準と言っても良いかもしれません。ここでは、その3つの要件について簡単に説明します。
(1)ユーザー参加型・ユーザーへの信頼
最初の要件として、「ユーザー参加型」であること、そのユーザーに対してある程度の“信頼”を置いていることが挙げられるでしょう。
先ほど、「ソーシャルテクノロジーでは、ユーザーが集まり、情報を持ち寄ることに重きが置かれる」と説明しました。これは取りも直さず、「ユーザーが価値のある情報を持ち寄ってくれる」という前提に立っていることを意味します。そして、そこにはユーザーに対する信頼があります。
もちろん、全てのユーザーが必ずしも信頼できるわけではありませんが、そこはユーザー同士がお互いの信頼性を評価し合うシステムを取り入れることにより、ある程度の秩序を保てます。例えば、Amazonのカスタマーレビューの「このレビューが参考になった」ボタンなどが、それに当たります(図1-2参照)。
図1-2 Amazonのカスタマーレビューの最後に付く評価ボタン(2009年10月25日現在) [クリックで拡大] |
このように、ソーシャルテクノロジーでは「ほとんどのユーザーは信頼でき、その信頼できるユーザーが信頼できる情報を持ち寄ってくれる」という前提でサービスが設計されます。
(2)データ中心・情報の価値重視
2番目の要件は「データ中心」「情報の価値重視」というものです。
先に述べたように、ソーシャルテクノロジーは、多くのユーザーが参加し、情報を残すことによって価値が生まれます。逆に言えば、いくら高度な技術を駆使したWebアプリケーションであっても、多くのユーザーが情報を持ち寄ってくれなければ、ソーシャルテクノロジー足りえません。なぜなら、ユーザーは他のユーザーが持ち寄る情報に価値を感じて、そのWebアプリケーションを使うからです。ユーザーが情報を持ち寄ってくれるのか、どのような情報を持ち寄ってくれるのか、これが「データ中心」「情報の価値中心」というソーシャルテクノロジーのもうひとつの要件です。
(3)ネットワーク外部性・ネットワーク効果
3番目の要件は、「ネットワーク外部性」または「ネットワーク効果」と呼ばれるものです。
前述の通り、ソーシャルテクノロジーでは「ユーザーが参加」し、「情報を持ち寄る」ことで価値が高まります。新規に参加するユーザーにとっては、そのWebアプリケーションをどれだけの人が使っているか、どれだけの情報が蓄積されているかが重要です。より多くの人が使っているほど、またより多くのデータや情報が集まっているほど、そのサービスを使うインセンティブが高まります。
このように人も情報も集まれば集まるほど、その価値が増していきます。これこそが「ネットワーク外部性」「ネットワーク効果」と言われるものであり、この特徴を備えていることが、ソーシャルテクノロジーの要件となります。
図表1-3 ソーシャルテクノロジーのスパイラル |
ここまで見てきたように、ソーシャルテクノロジーと呼ばれるものは機能そのものではなく、使われ方に大きな特徴があります。
では実際に、ブログやWiki、SNS、写真・動画共有サイト、マイクロブログという5つのWebアプリケーションが、具体的にどのような機能を持ち、どのように使われているのかを簡単に見ていきましょう。
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