「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る《1-1》 「ソーシャルテクノロジー」とは何か――NTTデータ流ソーシャルテクノロジー

「Twitter」や「SNS」に代表されるソーシャルテクノロジーが、企業でも使われ始めた。厳しい経営環境を乗り切るために、組織へ組み込み、コミュニケーションの活性化に役立てようとする企業も現れている。本連載では、2009年のダボス会議で「持続可能な100社」に選ばれたNTTデータの取り組みを中心に、ソーシャルテクノロジーのメリットから活用のポイントを分かりやすく紹介する。

1.1.3 テクノロジー1 「ブログ」(Blog)

1997年前後に登場したブログは、「Webのソーシャル化」に大きく貢献したWebアプリケーションです。当初は、個人が自分の考え(専門的な論評や時評)を発表するためのツールとして広まりました。特に日本の場合、“日記”を中心とした多様な情報表現として使われ、普及してきました。ブログサービスを利用すれば、難しい技術を習得することなく個有のWebサイトを持てることから、現在は個人からメディア、企業まで広範囲に使われています。ブログを構成する機能は、大きく3つあります。

記事投稿
まず基本となるのは、ブログ所有者が記事を投稿(post/publish)する機能です。これは、Webページの「フォーム」と呼ばれるデータ入力機能を使っているので、誰でも簡単に文章や画像、動画などの要素を盛り込んだ記事をワープロ感覚で作成し、Webページとして公開できます。

コメント
次に、投稿されたブログ記事を読んだ訪問者が感想や意見、批評などを書き残せるコメント機能があります。ブログ記事の投稿は、基本的には所有者だけができるのに対して、コメント書き込みは、そのブログを訪問して記事を読んだ(開いた)人なら誰でも可能です(所有者が制限することも可能)。ブログ所有者は書き込まれたコメントを読むことで、自分の記事に対するフィードバックを受け取ることができます。

トラックバック
ブログを普及させた決定打が「トラックバック」と呼ばれる機能です。これを使うと、相手のブログ記事に自身のブログ記事への“リンク”を張ることができるようになります。例えば、AさんがBさんのブログ記事にトラックバックを送信すると、Bさんのブログ記事の中にAさんのブログ記事へのリンクが表示され、BさんやBさんのブログ読者がリンクをクリックすると、Aさんのブログ記事へ到達します。言うなれば、「私はあなたのブログ記事について書いています。よかったら私の記事も読んで下さい」という、自分のブログへの誘導機能と言えます(図1-4参照)。

図1-4 ブログの投稿・コメント・トラックバックの仕組み
図1-4 ブログの投稿・コメント・トラックバックの仕組み

このトラックバック機能により、Web上で点在しているブログ記事がネットワーク化され、読者はひとつの記事を起点に様々な記事を読んで回り、議論の痕跡を確認できます。そのため、自分の興味に合致するブログを発見しやすくなり、その結果、触発されて自分でもブログを書き始める人が爆発的に増えました。これがブログ普及の要因になったのです。

1.1.4 テクノロジー2 「Wiki」

Wikiは、共同編集や情報共有を目的としたWebコンテンツ管理の技術です。その歴史は古く、1994年には最初のWikiと言われる「WikiWikiWeb」が開発され、それを使ったサイトが1995年に立ち上げられました。Wikiを特徴付ける要素は、大きく3つ挙げられます。

簡便なページの書き換え
Wikiの最も大きな特徴は、「Wikiで作成されたWebページはWebブラウザ上で簡単に編集できる」ということです。一般にWebページを編集するには、パソコン上で元ファイルを編集した後、ファイル転送ソフトウェアを使ってWebサーバーに転送し、既存のファイルと置き換える、といった煩雑な手順が必要です。それがWikiで作成されたWebページなら、個々のページにある「編集(Edit)」をクリックし、ブラウザに表示された内容をその場で書き換えて「送信(Submit)」するだけと、非常に簡単です。

簡便な記述形式
WikiはWebページの記述形式も簡便です。一般にWebページ作成には、HTML(Hyper-Text Markup Language)という記述形式を使います。そして、Webブラウザで正しく表示させるために様々な“作法”を覚える必要があります。それが、Wikiでは「Wiki文法」と呼ばれる、HTMLに比べて簡易な記述形式を使うため、誰でも簡単にWebページの内容を読み書きできるようになっています(図1-5参照)。

図1-5 HTML表記とWiki表記の違い
図1-5 HTML表記とWiki表記の違い

複数ユーザーによる編集
Wikiで作成されたWebサイトは、許可されたユーザーなら(ユーザー認証がないなら文字通り誰でも)、インターネットにさえ接続していれば、いつでも世界中どこからでも編集作業に加われます。この仕組みを使えば、物理的・時間的な制約を飛び越えて、世界中の知識を集約することも可能です。このWikiのメリットを最大限に活かしているのが、前述したオンライン百科事典のWikipediaです。2001年に立ち上げられたWikipediaは、様々なユーザーが編集に参加した結果、1300万項目(2009年10月時点、全言語)を擁するまでに成長しています。

1.1.5 テクノロジー3 「SNS」

SNSは、ユーザーにコミュニケーションの場を提供するWebアプリケーションです。ユーザーはSNSが提供する機能を使い、友人と交流を深めたり、友人の輪を広げていきます。20022003年頃、米国で「Friendster」、「LinkedIn」といったSNSが登場し、日本でも2004年初頭、後に国内でSNSの代名詞となる「mixi」、「GREE」が生まれました。SNSの特徴的な機能は次の4つです。

プロフィール機能
SNSのユーザー(会員)は、登録時に必ずプロフィールを登録します。何を登録するかはサービスによって異なりますが、一般には写真や画像、氏名、出身地、仕事や趣味を記入します。このようなプロフィール登録があることで、後述するネットワーキング機能やコミュニティ機能が活きてきます。なお、日本では実質的に匿名性のSNSが多いのに対し、欧米のSNSは実名で登録し、プロフィールなども実情報を登録するのが一般的です。

ネットワーキング機能
SNSの根幹をなす機能として「ネットワーキング機能」があります。ユーザーがSNSに加入する目的は、人とのつながり(ネットワーキング)を広め、深めることです。そのためSNSには、友人のリスト化や友人の紹介、友人同士でのメール送受信など、ネットワーキングを促す機能が豊富にあります。前述のように、ユーザーは互いにプロフィールを公開しているので、共通の話題を持つ人と知り合ってコミュニケーションを取るのも比較的容易です。

コミュニティ機能
ユーザー同士のネットワーキングを支援するため、SNSには同じ仕事や趣味の人が集まる「コミュニティ機能」があります。各コミュニティには参加者だけが読み書きできる掲示板などが用意されていて、参加者はそれらを利用することでコミュニティ内で人とのつながりを広げられます。

日記や写真などのコンテンツ投稿機能
ユーザーは日記や写真などのコンテンツを“マイページ”に投稿し、管理できます。公開プロフィールだけでなく、こうしたコンテンツを通じても“人となり”を理解し合え、ユーザー同士のネットワーキングが活発になります。

(連載目次はこちら

NTTデータ流ソーシャルテクノロジーNTTデータ流 ソーシャルテクノロジー
~「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る~

■Nexti運営メンバー有志(著)
■新書版 132ページ
■定価:1,050円(税込)(本体:1,000円)
■ISBN:978-4-89797-843-7

Amazonでのご購入はこちらから

本連載は、2010年1月にリックテレコムから発行されたソリューションIT新書『NTTデータ流ソーシャルテクノロジー ~「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る~』(著者・Nexti運営メンバー有志)を転載したものです。

永安 悟史(ながやす さとし)

アップタイム・テクノロジーズLLC
共同創業者 兼 最高経営責任者

2004年、NTTデータ入社。並列分散データベースシステムの研究開発や導入技術支援、保守サポートの後、データセンターの新規サービスの企画・開発・運用に携わる。Nextiでは主に渉外活動を担当した。2009年、NTTデータを退職。同年、アップタイム・テクノロジーズLLCを創業。オープンソースやオープンイノベーションなど、次世代型のR&Dおよびテクノロジー・マネジメント(MOT)に特に強い関心を持つ。

関連リンク

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

FEATURE特集

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。