「移動するIoTデバイスの通信手段には適していない」
このような評価が定着しているSIGFOXとLoRaWAN。動き回るものには全く使えないというイメージも先行しているが、果たして本当に耐移動性はないのだろうか?
そんな疑問に応える実験を行ったのが、スカイディスクと京セラコミュニケーションシステム(KCCS)だ。
「事前情報では、人が走るくらいのスピードでも、LoRaWANで扱うのは難しいと聞いていた。しかし、1台のゲートウェイのエリア内であれば、時速40kmでも問題なく通信できた」。スカイディスクの橋本氏はこう語る。
また、KCCSの日比氏はSIGFOXについて、「実際に電波測定してみたところ、時速20kmくらいまではSIGFOXで通信できることを確認した。自転車くらいであれば十分使える」と説明する。
これらの結果を見ると、必ずしも移動するデバイス全てでSIGFOXやLoRaWANが使えないわけではない。その弱点をしっかり理解したうえであれば、移動するIoTデバイスにもSIGFOXとLoRaWANは活用できる。
ネックは「ハンドオーバー」?SIGFOXやLoRaWANには耐移動性がないと評価されてきた主な理由は、「ハンドオーバー」の機能を持っていないためだ。
例えば、IoTデバイスが広範なエリアを移動しながら通信し続ける場合、複数の基地局を渡り歩くことになる。スタート地点では基地局Aにつながっていても、しばらく移動していると基地局Aの電波は次第に弱くなる。すると、もっと強い電波の基地局はないかとデバイスは探し、電波が強い基地局Bが見つかると、そちらに通信を切り替える。これがハンドオーバーだ。
しかし、SIGFOXやLoRaWANにはハンドオーバーの機能がないため、「基地局をまたいで移動すると、通信が切れてしまうのではないか?」(図表1)。そこで、SIGFOXやLoRaWANには、耐移動性が無いと一般的に言われてきた。
図表1 移動するデバイスでSIGFOXやLoRaWANを使うとどうなるか?