新アーキテクチャ組み込み、BIG-IPシリーズを刷新
こうした新事業戦略を推進するための具体策として、F5は2つの新製品と、1つのパートナーシップを発表した。
新製品の1つ目は、“クラウドレディなADC”として2017年2月から発売するハードウェア製品「BIG-IP i」シリーズだ。
BIG-IP iシリーズの最上位モデル「BIG-IP i10000シリーズ」
SDNコントローラやクラウドオーケストレータとの連携によるプロビジョニング/オペレーションの自動化が可能で、ビジネスディベロップメントマネージャの帆士敏博氏によれば「多数のパートナーとの連携によって、構成変更が簡単にできる」。「テンプレートを適用するだけでF5のサービスがすぐできたり、数クリックでWAFが提供できたりする」という。
ビジネスディベロップメントマネージャの帆士敏博氏
ハードウェアとしての機能・性能面でも、大きな特徴がある。帆士氏が「BIG-IP iシリーズの最大の特徴」として挙げるのが、F5独自技術「TurboFlex」の搭載だ。
トラフィック処理を効率化するTurboFlex機能
これは、CPUとFPGAで行うトラフィック処理を目的に応じて変更することでパフォーマンスを最適化する技術だ。「セキュリティ」「ADC」「プライベートクラウド」の3種のプロファイルのうち、ユーザーが選択したプロファイルに応じてその処理をFPGAにオフロードする。例えば、セキュリティ関連の処理をFPGAに行わせることでCPU使用率を上げ、ADCのパフォーマンスを向上させるといった使い方ができる。
2つ目の特徴は、EEC SSLのハードウェア処理に対応したことだ。ECC暗号は、RSA暗号に比べて短い鍵長で同じ強度を実現できる暗号方式。BIG-IP iシリーズの全ラインナップが対応しており、帆士氏によれば、ADCでは「業界初」の取り組みだという。
BIG-IP iシリーズを「マルチクラウドのハブ」に
このBIG-IP iシリーズの発売と合わせて、F5はエクイニクスとのパートナーシップも発表した。
エクイニクスは、AWSやMicrosoft Azure、Office 365といったパブリッククラウドとの専用線接続サービスを提供する“クラウドエクスチェンジ”事業者だ。同社とF5が提携することで、下図のように、企業が複数のパブリッククラウドを併用する際の“ハブ”の位置にBIG-IP iシリーズを配置し、1箇所で複数クラウドのセキュリティと可用性をコントロールできるようにする。
エクイニクスとの協業イメージ
帆士氏によれば、現在、従来はオンプレミス環境のサーバーに配置されていた業務アプリケーションの“置き場所”が分散化しているという。プライベートクラウド、そして社外のパブリッククラウドにも業務アプリケーションが配置され、しかも、事業者が異なる複数のクラウドを併用し、用途に応じて使い分けるケースも珍しくない。
そうした「マルチクラウド」の環境においても、オンプレミスと同様に業務アプリケーションの可用性とセキュリティを担保し、かつそれらを効率的に運用・管理したいという新たなニーズが出てきていると同氏は指摘する。「アプリケーションがどのクラウドにデプロイされても同じセキュリティを保つ必要がある。だが、複数のクラウドを個別に運用管理し、アプリの健全性、トランザクションを把握することは大変になる」という。
BIG-IP iシリーズの発売とエクイニクスとのパートナーシップは、その解決策としてF5が提示するソリューションだ。「ハブにコントロールポイントを置くほうが効率的で、各クラウド事業者に合わせなくてもいい。日本でもこういう形態が増えつつある」と帆士氏は話す。
このほか、ソフトウェア製品として、Dockerコンテナ環境で動作する「Application Service Proxy」も発表した。基本的な負荷分散機能とトラフィックの可視化機能を提供するもので、マイクロサービス間の通信を可視化する。また、BIG-IP iシリーズとApplication Service Proxyを接続する「Container Connector」も用意する。
コンテナ環境向けに提供開始するソフトウェア製品
これらコンテナ環境向けソフトウェア製品は、2017年度第2四半期を目処に提供を開始する予定だ。