シスコシステムズが企業向けNFVソリューション「エンタープライズNFV」の年内発売を準備している。ルーティングやファイアウォール(FW)等のネットワーク機能を仮想化して1台のハードウェア内で稼働させるもので(図表1)、機能の追加・変更、拠点への展開を迅速に行えるようにする。
図表1 エンタープライズNFVの導入効果[画像をクリックで拡大] |
同社はこれまでもルーターの「Cisco ISR」やFWの「Cisco ASA」等の仮想アプライアンス版と、それらを管理・制御するコントローラ製品として「Prime Infrastructure(PI)」や「APIC-EM」を提供してきた。エンタープライズNFVは、それらの製品をより使いやすくし、企業ネットワークのNFV/SDN化を促進するものだ。
既存製品+αで企業向けNFV「エンタープライズNFVを構成するコンポーネントの大半は既存製品。これまでも仮想アプライアンスを使っているお客様はいたが、運用が面倒だった。エンタープライズNFVによって、それが非常に簡単になる」
そう話すのは、システムズエンジニアリング担当執行役員でSDN応用技術室長を務める財津健次氏だ。エンタープライズNFVの構成要素を示したのが図表2だ。青色が既存製品で、これに「Enterprise Service Automation(ESA)」「Network Functions Virtualization Infrastructure Software(NFVIS)」の2つを加えて構成される。
図表2 エンタープライズNFVの構成要素 |
ESAは、いわゆるオーケストレータだ。ESAのGUIで使いたい機能を設定し(右下画像)適用先の拠点を選ぶと、①それを実現するようAPIC-EMとPIに指令を出す。次に、②APIC-EMがプラグアンドプレイ機能によってハードウェアとハイパーバイザのNFVISに設定を行い、仮想化されたネットワーク機能(VNF)をインストールする環境を整え、③PIがVNFのプロビジョニングを行う仕組みだ。
これまでシスコの仮想アプライアンスを使う場合には②③を手動で行い、かつ、FWはFWの、WAN高速化はWAN高速化の画面でそれぞれ個別に行う必要があった。それを、ESAで設定するだけで全自動化できるのがエンタープライズNFVの売りだ。システムズエンジニアマネージャーの松崎虎雄氏によれば「VNFを4つ使う場合で約10分、2つなら5分でプロビジョニングが完了する」。大規模なWANほど運用負荷の削減効果は大きい。
ESAの画面例。使いたい機能のアイコンをドラッグアンドドロップで配置し、任意のネットワークと配線するかたちで設定プロファイルを作り、それを拠点ごとに適用する。ネットワークの種類ごとにオススメの機能を自動設定してくれる機能も備える |
なお、ハードウェアはISR4000と、サーバーの「Cisco UCS-C」の2種類が使え、汎用x86サーバーも選択可能だ。ISR4000では稼働させられるVNF数が1~2個と少ないが、サーバーモジュール「Cisco UCS-E」を追加すれば、容量を拡張して複数のVNFを運用することもできる。もちろんUCS-Cはより大容量だが、財津氏は「拠点ルーターをサーバーに移行させようという考えはない。既存のISR4000に機能を加える感覚で使ってほしい」と話す。
また、VNFはシスコ製だけでなく、サードパーティ製品の搭載も可能だ。