今年に入り、移動通信システムの標準化を行う3GPPで「LTE版LPWA」とも言える、2つの新たなIoT向け無線通信の規格が固まった。6月に発表された「NB-IoT(端末仕様の名称はCat.NB1)」と、その少し前に登場した「Cat.M1(カテゴリM1)」だ(図表1)。
図表1 セルラーIoT向け端末規格 |
商用展開はまだ先だが、携帯電話事業者がライセンスバンドを活用し、本格的なIoT向け通信サービスを提供できるようになる。
モジュール価格と省電力性がネックIoTの導入に際して、携帯電話事業者の通信サービスが選択肢の1つとして検討されるケースはもちろん多い。
携帯電話事業者の通信サービスは、生活・ビジネス圏のほぼ全域をカバー。日本ではその多くでLTE/LTE-Advanced(以下LTEと表記)による数十~数百Mbpsのデータ通信が使える、非常に使い勝手の良い通信サービスだからだ。
だが現状、携帯電話事業者がIoT向け通信の主役になっているとまでは言えない。エリクソンは今年6月にまとめた移動通信市場に関するレポートで、2015年時点で46億のIoTデバイスがインターネットに接続されていると推定しているが、そのうち携帯電話事業者によるものは4億。大半はWi-FiやBluetoothなど、セルラー以外の通信手段によるものとしている。
携帯電話事業者のIoT向け通信サービスを利用するにあたって、大きなネックとなるのがコストだ。
コストと言うと、通信料金を思い浮かべるかもしれないが、それはソラコムのようなIoT向けのMVNOなどが登場したことで、改善が進んでいる。むしろ、現状の課題は、IoTデバイスに組み込む通信モジュールのコストだ。特に高速通信に対応するLTEモジュールは単価が3500~5000円ほどにもなることから、IoT用途では価格がこなれた3Gモジュールが使われることが多い(図表2)。
図表2 セルラーIoTがフォーカスする市場 |
また、消費電力も課題になる。センサーネットワークで利用するには、内蔵電池で数年間稼働することが求められることが少なくない。電力消費量の大きな現在の3G/LTEでは対応が困難だ。