雅樂川陽子社長が10年前に設立したCOCO-LOは、看護師や作業療法士が在宅看護やリハビリサービスを提供し、4つの事業所・80名の従業員を有する。マンツーマンのリハビリ支援サービスは高齢者のみならず、病気等で障害を持つ中高年の男性にも人気である。
働きやすさを整え、子育て世代の女性を確保「この業界は人材難で、業務内容が理解されにくかった創業時は、とりわけ人が来てくれませんでした。医療保険・介護保険が適用されるサービスは料金が決まっており、高い給料も出せません」
雅樂川社長はビジネス環境をこのように説明する。
代表取締役の雅樂川陽子氏。作業療法士として勤務の後、起業。当初は訪問看護サービスへの理解は低く風当たりも強かったが、地域で受け入れられ働き手をサポートしてきた結果、規模が大きくなった |
なんとか確保した働き手は子育て世代の女性看護師だった。雅樂川社長自身もいずれ出産・子育て時期がくる。「子どもが熱を出したら休めるような、家族との時間を大切にできる職場にして、人材が集まるようにしよう」と考えた。仕事は定時で終了。現在、従業員の1割が産休・育休中である。
最近は、ワークライフバランス、女性の活躍推進など、家庭生活と仕事を両立する気運が高まっているが、現実の仕事現場では「急に休まれたら代わりがいない」「きれいごと」と捉える向きもある。COCO-LOでは実際、どう運用しているのだろうか。
当初は子育てとの両立を主眼とした制度だったが、従業員が30名に増え、独身者や子育てを終えた世代も勤務するようになると不満の声も上がったという。
そこで従業員全員が生産性を上げることで休みがとりやすい職場を創り出すよう改善した。
一人の従業員が勤務時間内にたくさんの仕事をこなせれば、会社は多めに人員を確保でき、いざというとき融通が利くのだ。
雅樂川社長は、「結果を出すために制度があると理解してもらうよう努めています」と力を込める。
こうした意識の高さや主体性が、サービス現場で良い「気」を醸し出しているのだろう。
時間管理は特製手帳で情報共有にモバイル機器効率化実現へのツールの一つが、オリジナルの手帳である。広報部の小山美生氏は次のように話す。
「毎日、やるべきこととかける時間を書きだし、細かくスケジューリングします。ムダがなくなって時間内に終わることができます」
手帳を見せてもらうと、予定がびっしり記入されている。
「スケジューリングのお話をすると『こんなに厳しいんだ』とビックリされる方が多いのですが、時間は自分のもの、自分でコントロールしていく時代だと思います」と雅樂川社長は指摘する。
広報担当 小山美生氏 | 経営企画室 管理者制度 導入アドバイザー 岡田大輝氏 |
訪問看護に出るスタッフとの情報共有はiPhoneのメッセージ機能を活用。また、一日の業務報告や事業所間での様々な情報の共有にはiPadとクラウドサービスのグループウェアを使っている。
同社は、創業間もないころから、今のクラウドサービスのような、場所を問わず情報を見える化し共有できる仕組みを求めていた。当時はITベンダーに話をしても相手にされなかったというが、やっとサービス側が追いついてきた格好だ。
iPadを活用して情報共有 |
この冬からは、自社の経験に基づき、制度・仕組みづくりのサポートサービスもスタートした。
経営企画室の岡田大輝氏は、「働きやすい環境を整備したいという会社は多いものの、何から手を付けてよいか迷っていらっしゃる。実現へのお手伝いができれば」と話している。
では、次に同社が目指すものは何か。
一つは、看護・リハビリのエキスパートとして、サービスレベルのさらなる向上、優位性の確立だ。
もう一つは、ロボット等を活用した新しい介護サービスの開発であると雅樂川社長は打ち明ける。
「例えば椅子から立ち上がるときの介助をロボットで代替できれば、少ない人数で充実した介護ができます。桐生市のモノづくり企業や大学と連携しながら、介護業界の基盤づくりをしていきたい」
介護を必要とする人が増える時代を安心して迎えられそうだ。