お客様の資産を活かし発展
――ユニファイドコミュニケーション関連では、今年(2009年)5月に次世代ユニファイドコミュニケーションソフトウェア「UNIVERGE Sphericall」(スフェリコール)の出荷を開始しました。この半年の取り組みと成果は。
保坂 住民への遠隔相談サービスなどに利用したいという自治体様からのニーズがあり、いくつか商談が進んでいます。ちょうど投入時期に新型インフルエンザの問題が発生してテレビ会議が注目されていますが、災害対策用に「UNIVERGE Sphericall」を導入したいという案件もあります。遠隔相談の仕組みが応用できるので、そのような横の拡がりが出てきています。
――企業への導入状況はいかがですか。
保坂 NECはSphericallを、電話を基本領域とした「UNIVERGE SVシリーズ」とは違って、業務システムと連携させて新たな領域にビジネスコミュニケーションを拡大させる製品と位置づけています。
業務システムとの連携を効率化させるためのAPIの整備も完了し、これから本格的に連携ソリューションを立ち上げていくところです。
業務システムとの連携を考えるうえで重要なポイントは、一気に全面的なリプレースを促すのではなく、お客様の既存の資産を活かし、地続きでUCを活用したシステムに発展していくことだと思っています。ユニファイドコミュニケーション導入のために業務システムまで一新するということはできません。当社のシステムは、例えば既存のEメールや携帯電話を活用するなど、ユーザーが「これもユニファイドコミュニケーションなの?」というくらい身近なところから始めることができるのです。
――Sphericallの販売施策はどのように考えていますか。
保坂 ユーザーごとの課題やニーズに合わせてソリューションを組み上げる「SIモデル」とパッケージ化して販売する「量販モデル」の2つがあります。
大手企業に対してはSIモデルをオーダーメイドする場合が多いですが、例えばパンデミック対策のような緊急性が必要な場合、SIモデルでは間に合わない場合もでてきます。Sphericallは導入後もカスタマイズできる融通性があるので、最初にパッケージで導入してもSIモデルに発展させることができます。
また、お客様と一緒に考えたソリューションのなかから、いくつかをパッケージ化して量販モデルとしていきます。
SIモデルと量販モデルの2つをきちんと整備し、ユーザー企業の規模や状況によって柔軟に対応できるようにしておく。それがSphericallに限らず、お客様のニーズを満たすうえで重要なことだと考えています。
FMCはICT武装の商材
――既存の電話を中心とした領域、「UNIVERGE SVシリーズ」や「UNIVERGE AspireX」の現状はいかがですか。ウィルコムと共同で「FMC拡販推進プロジェクト」を発足させるなど、“モバイル連携”に力を入れていますね。
保坂 中小および大規模のお客様の現状をみると、FMCソリューションは大変重要な商材です。I+CでFMCソリューションを導入することは、点から点を結ぶ従来の形を面に発展させる要素の1つになります。
しかし、厳しい事業環境の影響を受け、多くのお客様は投資効果に非常に敏感になっており、効果が見込める使い方をしたいとお考えになっています。
我々は、FMCソリューションを音声だけでなくデータも含めた「ICT武装」のための商材としても位置づけており、システマティックにICT武装をする時の重要なツールとして提案していきます。NECが目指すユニファイドコミュニケーション、アプリケーション連携への提案活動の一環としてFMCを進めていきます。
――今後に向けた新たな施策は。
保坂 例えば「UNIVERGE SV8000シリーズ」の配下でAspireXを動くようにして、大手企業の支店にも「AspireX」を導入できるようにします。全体としては、FMCサービスを中心とした方向性で取り組むとともにNECが目指しているユニファイドコミュニケーションに向けての提案も進め行く方針です。
――「エコ」が差別化の1つになっていますが。
保坂 90年以降のCO2排出量の推移を見ると、エネルギー転換部門や工業プロセス部門等と比べ、民生業務部門の伸び率が高くなっています。ここは、オフィス環境やワークスタイルに関連する領域であり、我々が貢献できる分野です。
当社では品川と大阪のブロードバンドソリューションセンターでペーパーレスやテレワーク、モバイル活用等でのワークスタイル革新をすでに実践しており、適用前比で43%のCO2削減を実現しています。これを横展開していきます。
環境負荷低減(エコ)に限りませんが、自ら体験して効果を実感しているシステムが提供できる点もNECの強みといえます。