タブレットで最新の預金状況や融資状況などを見ながら商談こうしてセキュリティの課題もクリアし、長野銀行でタブレットの利用がスタートしたのは2015年6月のこと。
「若い営業係ばかりではないので、最初は抵抗感が相当あったと思います」と小出氏は明かす。システム運用やヘルプデスクを担当している営業統括部 推進担当の酒井雪子氏も、「当初はタブレットやモバイルプリンターの使い方などに関する質問が非常に多く来ました」と振り返る。
しかし、それから半年以上が経過。「最近はみんな慣れて、『もっとこういう機能が欲しい』といった要望まで出るようになってきました」と酒井氏は喜ぶ。
営業係が実際に持ち歩いているタブレットとモバイルプリンター |
実際にタブレットを利用している本店営業部 係長の赤澤典明氏は、タブレットの導入効果をこう話す。「タブレットで最新の預金状況や融資状況などを見ながら商談できるようになり、お客様とさらに的確にコミュニケーションできるようになったと感じています」
以前も、顧客情報を紙ベースで持ち出すことは可能だった。ただ、そのためには上長への申請・承認、持ち出し物管理簿への記載といった事務手続きが必要だった。それが現在では、いつでも必要なときに、タブレットで最新の顧客情報を閲覧可能だ。また、従来はプリンターで印刷して持ち歩いていた訪問予定表も、タブレット上でいつでも閲覧できる。
「煩雑な事務作業が減り、営業係の業務をかなり効率化できました。また、お客様にもより有効な提案ができるようになったと思っています」と小出氏も評価する。
さらに、セキュリティ面も以前より強固になったといえる。紙で持ち出した場合、紛失すれば、それで終わりだ。しかし、タブレットの場合、二重のパスコードで守られ、しかも遠隔から対策も打てるからだ。
本店内に設置されたタブレットの充電器。複数のタブレットを一気に充電できる。また、左に見えるのはモバイルプリンターだ |
セキュリティの厳格化という意味では、もう1つの預かり証の印刷・管理も期待通りの成果を挙げている。
従来は、預かり証を営業係が手書きで発行していたため、厳密な管理ができなかった点が課題だった。しかし現在は、誰ががいつ、どんな預かり証を発行し、預かり物は現在どのような状況にあるのか――。こうした情報をリアルタイムにシステム上で把握できる。このため、預かり物に関するミスや不正の防止につながっているという。
タブレットとモバイルプリンターを利用し、預かり証を印刷しているところ |
今後はペーパーレス会議やプレゼンに用途を拡大長野銀行にとって、今回のシステムはタブレット活用の第一弾に過ぎない。4月からは役員・部長クラスにもタブレットを導入し、ペーパーレス会議を実現する予定だ。
また、小出氏は「今後は営業係のタブレットを、投資信託や保険商品などのプレゼンテーションツールとしても活躍させたいです」と抱負を語る。
「これまでの銀行にはなかった文化」――。田中氏はタブレットによる外出先での顧客情報閲覧について、このように表現する。銀行にとって、“最大の難関”ともいえる顧客情報のモバイル化をセキュアに成功させた長野銀行。その前には、非常に大きなタブレット活用の可能性が広がっているといえるだろう。