5G(第5世代移動通信方式)の実用化に向けた動きが本格化している。その標準化については、ITU-Rにおいて「IMT-2020」の名称で行われているが、「20Gbpsを目指すべきではないか、とうたわれている」と説明するのは三菱電機 情報技術総合研究所 無線通信技術部長の岡村敦氏だ。
現行の4G(LTE-Advanced)の最大伝送速度はNTTドコモの300Mbpsだが、その60倍以上の伝送速度を5Gは目指そうとしているのだ。
では、どうやって20Gbpsの高速通信を実現するのか。具体策の1つは、周波数の幅を広げることだ。5Gでは、移動通信では従来使われていなかった4GHz以上の高周波数帯も活用し、広帯域の周波数を確保しようとしている。
「ただし、それだけでは足りないので、空間多重も必要になる。空間多重とは、平たく言えば、電波(ビーム)の角度にそれぞれ差を付けて打つこと」(岡村氏)。例えば、500MHz帯域×16空間多重(16ビーム並列通信)が、20Gbps実現のアプローチの1つになる。
5G(IMT-2020)では、20Gbpsの伝送速度が要求条件として検討されているという |
高周波数帯は電波の減衰が大きいため、5GではMassive MIMOという技術を使い、電波を強化する。簡単にいうと、Massive MIMOとは、複数のアンテナ素子から送信される波を合成して電波を強化する技術だ。また、電波の指向性も絞り、通信相手の端末に向けてエネルギーを集中させる。
三菱電機の場合、超多素子アクティブ・フェーズド・アレイ・アンテナ(APAA)というアンテナ技術を開発。このAPAAとビーム間の干渉を低減するプリコーディング技術を連携させた「マルチビーム多重技術」により、高周波数帯での16ビーム並列通信(16空間多重)を以前から開発していた。
三菱電機の5G向けマルチビーム技術の概要 |
三菱電機は、NTTドコモが昨年7月に開催した「5G Tokyo Bay Summit 2015」において、44GHz帯による16空間多重での20Gbps伝送シミュレーションを行っている。