モバイルアイアン・ジャパンの代表執行役社長・野原康裕氏は、2015年の同社の国内ビジネスには大きく3つの流れがあったと説明する。
1つ目は、モバイル活用に対する企業の意識が変わってきていること。「会社支給のデバイスであっても、従業員にいろいろなことをさせたいというCIOが増えてきている」。それにより企業は、デバイス内の領域を企業領域と個人領域に分けて管理する必要性に迫られているという。
2つ目は、EMMプラットフォームにおいてクラウドのニーズが高まっていること。2014年8月にリリースした「MobileIron Cloud」のユーザー数は順調に増えており、2016年も引き続き増加すると野原氏は見ている。
国内市場にクラウド製品が浸透している |
3つ目は国内ベンダーからの移行など、新規案件が増えていること。iOSやAndroidのバージョンアップに伴うEMMの更新を、即日実施できるといった点が評価されているという。このような対応は国内ベンダーには難しく、米国企業ならではのメリットだと野原氏はアピールした。
2015年は新規の大規模顧客が増加している |
野原氏に次いで、米モバイルアイアン戦略担当バイスプレジデントのオージャス・リジェ氏が説明に立った。同氏によれば、2016年にはモバイルデバイス・セキュリティを巡り、いくつかの対立が生じるという。
米モバイルアイアン戦略担当バイスプレジデントのオージャス・リジェ氏 |
例えば、Windows 10の登場によりもたらされる「レガシー」と「現代」の対立だ。
リジェ氏によれば、これまでのWindowsには2つのセキュリティ上の弱点があった。「その弱点とは、1つはファイルシステムの構造に起因するもので、あるアプリケーションが他のアプリケーションにアクセスし、データを取り出すことができていた。もう1つは、OSそのものが保護されておらず、アプリケーションがOSのドライバーに簡単にリンクして変更することが可能だった」
iOSの場合は、2010年にリリースしたiOS 4から、アプリケーションをサンドボックス化することでこれらの弱点を克服していた。サンドボックス型OSのアーキテクチャーは、アプリケーションデータを個々のコンテナに隔離することでOSを保護しており、また、この仕組みではEMM(Enterprise Mobility Management)ツールでセキュリティを一括管理できるという。
今年2月には、グーグルもサンドボックス型OSのアーキテクチャー「Android for Work」をリリースし、そして11月にはマイクロソフトが同様のアーキテクチャーを採用した「Windows 10 Mobile」の発売を開始した。
そこで、オフィス環境で多用されているWindowsのセキュリティがEMM方式に統一されることで、デスクトップPCを管理するチームとモバイルデバイスを管理するチームの役割の境界線が不透明になり、どちらのチームが予算をもって管理するのかといった対立が2016年から表面化してくるだろうとリジェ氏は説明する。
また、ID管理を巡る「マイクロソフト」と「グーグル」の対立もあるという。
マイクロソフトは従来、企業向けにActive DirectoryによるID管理を提供していた。それに対してグーグルは、消費者向けにクラウド上でID管理を提供してきた。
「しかし今やマイクロソフトもID管理をクラウド上で実施しようと、Office 365ではActive DirectoryはAzure Directoryに移行している。他方、グーグルはGoogle AppsやAndroid for Workにより、ID管理を消費者向けから企業向けにも展開するようになっており、両社ともに企業向けのID管理をクラウドベースで提供する戦略をとっている」(リジェ氏)
マイクロソフトもグーグルも、さまざまなサービスを企業に提供するための基盤としてID管理を位置付けていることから、ID管理をめぐる両社の対立は激しくなるとリジェ氏は予測している。