ワークスタイル変革Day 2015 講演レポート伊藤元重教授「これから創造的破壊が起きる」――アベノミクスと働き方変革の因果関係とは?

伊藤元重東大教授は、アベノミクスはステージ2に突入し、「これからものすごい勢いで、実体経済に影響を与えていく」と説く。例えば、今後加速するのが、労働力不足と賃金上昇だ。そのため、デフレ時代の常識を捨て去り、新しいワークスタイルへと変革できない企業は「生き残れない」という。

「日本経済はルビコン川を超えた」――。9月15日に開催されたイベント「ワークスタイル変革Day 2015」の基調講演に登壇した伊藤元重教授は、日本経済は「後戻りがない」重大な局面に突入したと強調した。過去20年間以上続いたデフレが終わり、「これまでの常識やモノの見方が通用しない」状況がやってくるという。

伊藤元重氏
東京大学大学院 経済学研究科 教授 伊藤元重氏

日本経済がルビコン川を超えた最大の要因は日銀の金融政策、いわゆる“異次元緩和”にある。

「通常、中央銀行が金融緩和するときは、短期の国債を使って介入する。要するに、いつでも戻れるようにだ。短期の国債であれば、3カ月もすれば政府は全部償還できる」

しかし、この異次元緩和で日銀が大量に買っているのは、10年、20年満期の長期国債である。「つまり何が言いたいかというと、日本の金融政策は、脱デフレの方向に完全にセットされてしまった」

これを受けて、まず反応したのが株式市場だった。中国経済への不安感から、ここ最近は大きく値を下げているものの、それでも民主党政権時と比べると株価は2倍以上になった。

また、「企業収益も、安倍政権発足後のこの3年の間に、35~40%くらい上がっている。2012年に4.2%だった失業率も3.3%に下がった」。

さらには、税収も増加し、石油を除けば物価水準も上がっている。「こうした状況を世界中の人に並べて見せれば、『大変な変化が起こった』と言うだろう」と伊藤氏は語る。

熱々になった風呂釜が、今から「実体経済」を温めていくただ、こうしたアベノミクスによる変化や恩恵を、日本の国民すべてが実感しているかといえば、そうではない。その理由について、伊藤氏は五右衛門風呂のたとえを用いて説明する。

五右衛門風呂では、鉄製の風呂釜に火を焚き、風呂を沸かす。「今、何が起きているかというと、風呂釜は熱々に温まっているが、中の水(=実体経済)はなかなか温まらない状態。この20年のデフレで冷え切った水を温かくするのは、そう簡単ではない」

だが前述の通り、日本の金融政策は脱デフレの方向に完全にセットされた。また、“ステージ2”に入ったアベノミクスは今後も継続する。

「風呂釜と中の水は、決して分離しているわけではない。熱々になった風呂釜がものすごい勢いで、実体経済に影響を与えていくのは、これからだ」

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