街中の看板や電灯が「ケータイ基地局」に変身!――ファーウェイがスモールセル設置で新機軸

スモールセル(小型セル)の展開を急ぐ通信事業者にとって悩みとなっているのが、設置場所を迅速かつ大量に確保することだ。ファーウェイはその解決策となる基地局展開の新モデルを提案している。

看板や電灯を見たら携帯電話基地局と思え――。そんな世界が近い将来に到来しそうだ。

通信事業者の間では、スモールセル(小型セル)の設置が今後さらに加速すると見られるが、それにあわせて、小型化した基地局装置を看板や電灯等に潜り込ませて展開しようとする動きが始まっているからである。

スモールセルはマクロセルに比べて設置コストを抑えることができ、かつ1局当たりの収容ユーザーが少ないために快適な電波環境が作りやすい。このスモールセル基地局を街中や施設内の電灯や照明付き看板、デジタルサイネージ等と一体化することで、展開を迅速に行おうとする狙いだ。これらの設備にはもともと電源が確保されている有利さを活かせるメリットがある。

屋外広告会社などと連携してスモールセルを設置

基地局設備を提供するベンダーは、数年前から小型化に取り組んできたが、実際にスモールセルの展開が進むにつれて、小型化だけでは解決できない課題も顕在化してきた。

それは、設置場所(サイト)の確保だ。スモールセルの設置に適した場所は案外限られている。通信事業者はサイトオーナーと交渉し、相応のコストを払って設置するわけだが、その手間とコストが膨れ上がることが大きな悩みだ。

これを解決するためファーウェイが推進しているのが「クラウド・ソーシング・スモールセル」という基地局展開モデルである。

ファーウェイ・ジャパンのマーケティング&ソリューションセールス本部でモバイルネットワーク担当最高技術責任者を務める鹿島毅氏は、「通信事業者、ユーザー、そしてサイトオーナーにとってもメリットがある枠組みを作ることによって場所の確保を促進していく」と話す。

基地局内蔵看板や電灯を作るだけでなく、その設置スペースを大量に所有する事業者等と提携して、サイトの確保・設置まで含めてトータルに通信事業者を支援するのだ。

ファーウェイ 鹿島毅氏
ファーウェイ・ジャパン マーケティング&
ソリューションセールス本部 モバイルネットワーク担当 最高技術責任者 鹿島毅氏

具体例として昨年12月には、フランスに本拠を置く屋外広告最大手のジェーシードゥコーと提携し、同社が市街地や交通機関、ショッピングモール等に所有する広告用スペースを基地局用に提供している。

オランダでボーダフォンが500カ所のバス停広告ボードにスモールセル基地局を展開。フランスでも同様に広告会社と協力して、スモールセル基地局を内蔵した広告ボードを展開中だ。中国・上海市では今後3年間で複数の通信事業者、電力会社と協力してスモールセル基地局を組み込んだ1万の「スマート街灯」を設置する予定という。

オランダでボーダフォンが展開するスモールセル内蔵のバス停広告ボード
オランダでボーダフォンが展開するスモールセル内蔵のバス停広告ボード

これにより通信事業者は、サイト確保と設置にかかるコストを効率化し、展開に要する期間も短縮できる。一方、広告ボード等の設置者は通信事業者からその費用の一部を得ることができる。また、Wi-Fiスポットで行われているように、周辺のスマートフォンユーザーに対して、集客を目的としたコンテンツ配信を行うといったことも可能になる。そして、ユーザーはエリアの拡大と通信品質向上の恩恵を受けられる(図表1)。

図表1 「クラウド・ソーシング・スモールセル」モデルのメリット
「クラウド・ソーシング・スモールセル」モデルのメリット

月刊テレコミュニケーション2015年6月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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