IoT時代の競争戦略とは?(後編)ポーター教授が伝授!「IoT戦略の立案時に検討すべき10の質問」

IT化の“第三の波”であるIoTは、過去最大のインパクトを企業に及ぼすとポーター教授は指摘する。では、企業はこのチャンスを活かすためのIoT戦略をどう組み立てていくべきなのか。ポーター教授によると、企業は10の選択肢に直面するという。

前編<ポーター教授のIoT変革論「モノの本質を変える“過去最大”のIT革命」>では、IoTを活用したスマート・コネクテッド・プロダクツが、業界の競争環境を決める5つの競争要因にどのような影響を与えるかについて見た。だが、スマート・コネクテッド・プロダクツの影響は業界内にとどまらない。業界の構造や、業界間の境界にも変化をもたらす。

ポーター教授はこれを農業向けトラクターを例にとって説明している。

まずトラクター単体のスマート・コネクテッド化からIoTへの取り組みがスタートしたとしよう。次のステップとして、耕運機や種蒔き機など、他の農業機械との連携へと発展するかもしれない。そのほうが顧客価値を増大できるからだが、連携する農業機械の中には他メーカーの製品が含まれることもあるはずだ。さらには、気象予報のシステムなど、農業機械以外の業界のシステムともつながっていくだろう。

こうして、IoT時代には、「それぞれのサプライヤーはバラバラかもしれないが、システムとして全体がつながっているという環境が出来上がる」(PTCジャパンのアシャー・ガッバイ氏)。

PTC
スマート・コネクテッド・プロダクツのケイパビリティ拡大は、業界構造や業界の境界にも影響を与えていく

これにより業界構造も変化する。従来、別の業界だった気象予報システム等も農業機械業界の一部となっていくなど、「IoTによって、農業機械業界の境界線がどんどん広がっていくことも考えられる」(ガッバイ氏)からだ。

その結果、どのような変化が起こるのか。具体的な変化は業界ごとに異なるが、ポーター教授は論文の中で3つの傾向があるとしている。

第一は、統合化のトレンドだ。データを早期に収集・蓄積することで、参入障壁を高めると同時に先行者利益を得ることが可能なため、統合化が進んでいくという。

第二は、第一の傾向と類似するが、再編圧力の高まりだ。「単一製品しか持たない企業は競争上不利な立場に置かれるだろう」と書かれている。

そして、第三は、重要な新規参入企業が現れる高い可能性だ。「従来の製品定義やすでに確立した競争手法に囚われず、守るべきプロフィット・プールもない企業が、接続機能を持ったスマート製品から付加価値創造の可能性を十二分に引き出す機会をつかみ取る、と予想されるのだ」とポーター教授は指摘する。

こうした業界構造の変化が起こるなか、IoT時代の新しい競争環境に適応できない企業は、統合化や再編圧力の波に呑み込まれていくだろう。一方、IoT時代における競争優位をしっかり確立できた企業は、既存の業界構造を超えたリーダーシップを獲得していくわけである。

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