「企業のネットワークは今後、モバイルを前提としたものになっていく」
無線LAN(Wi-Fi)大手のアルバネットワークスでCEOを務めるドミニク・オー(Dominic Orr)氏は、中国・上海で開かれた「Aruba ATOMOSPHERE 2014」で、こう語った。同氏が繰り返し述べたのが、有線LANに代わってWi-Fiが“主役”になる企業ネットワークの将来像だ。
「Aruba ATOMOSPHERE 2014」は、アルバネットワークスのパートナー、顧客企業から約500人を招いて、中国上海市で開催された。プレジデント兼CEOのドミニク・オー氏が基調講演で、同社の戦略と企業向け無線LAN の展望を語った |
スマートフォン/タブレット端末の爆発的な普及の中で、場所を問わずモバイルを使いこなし、常にインターネットやクラウドに接続している新たな世代が育っている。テクノロジーに精通したこの世代をアルバは「#GenMobile」と呼ぶが、#GenMobileの人材をいかに惹きつけ定着させるかが、企業の競争力強化において重要だとオー氏は訴える。
そのためには、モバイル端末とWi-Fiの位置付けが、従来のような「PCと有線LANを補完するもの」から、それらを「置き換えるもの」へと変わらなければならない。つまり、Wi-Fiを安全かつ安定的に利用できるインフラにすることが不可欠なのだ。
「ムダのない高速化」を実現
Wi-Fiがどこでも安全に使用でき、また、モバイル向けのアプリケーションやクラウドサービスが簡単に利用できる環境を整備しようとする場合、企業ネットワークにはどのような変化が起こるのか。
オー氏は、ネットワークの管理が非常に困難なものになると指摘する。企業のIT担当者は、これまでとは比較にならないほど大量かつ多様なモバイル端末の接続を管理し、セキュリティを運用しなければならないのだ。これを解決するため、アルバは「Stable Air」「Secure Air」「Smart Air」「Simple Air」の4つのレイヤで構成される「全無線化アーキテクチャ」を提供するという。
1つ目の「Stable Air」とは、安定した無線通信を指す。IEEE802.11ac対応製品によって、Wi-Fiの最大通信速度はすでに1Gbpsを超え、有線LANと遜色ないレベルに達した。2015年には、6Gbpsを超えるWave2対応製品も登場する予定だ。
だが、そうした単純な数値だけでなく、ロードバランス機能やアプリケーション毎の制御技術を使って、効率よく無線通信の帯域を活用できる環境もアルバは提供する。大量のモバイル端末が密集しているような環境では、最大通信速度以上に、ネットワークのキャパシティ管理が重要になるためだ。接続デバイス数の増加に合わせて無闇にネットワークを増強するのではなく、効率的に運用できる仕組みを合わせて提供することで「ムダのない高速化を実現し、ネットワークのライトサイジング(適正化)を可能にしていく」という。
2つ目の「Secure Air」は、無線通信の安全性を表している。
モバイル端末が今以上に浸透すれば、ネットワークセキュリティの考え方は変わらざるを得なくなる。従来は、企業側がネットワークに接続できる端末を支給してきたが、今後は社員の私物端末や、契約社員・アルバイト、あるいはゲストなど様々なユーザー、そしてデバイスからのアクセスを制御・管理できるようにしなければならない。「ユーザーやパケットレベルで状況に応じて判断し、動的に制御する“交通整理のようなセキュリティ”が必要になる」とオー氏は話す。
これを実現するのが、アルバの統合認証基盤「ClearPass」だ。端末とユーザー、利用しているアプリの種類などによって動的にセキュリティポリシーを適用するものである。
ClearPassの重要な点は、あらゆる端末・ユーザー、アプリを1つの認証基盤で管理できること、そして、他社ネットワーク製品とも連携可能なことだ。モバイルアイアンのMDMや、パロアルトネットワークスの次世代ファイアウォール等、サードパーティ製のセキュリティ製品とも連携し、幅広い機能を提供できるという。