法人向けMVNOビジネスの現状とは?――格安SIM人気で企業からも注目!

「格安SIM」や「格安スマホ」が話題を集め、一般にも広く認知が進んだMVNOだが、コンシューマ向けだけではなく、法人向けの動きも活発だ。法人向けMVNOサービスに関わる企業はどのような事業を展開し、どのような戦略を描いているのか。注目各社の取り組みをレポートする。

IIJ――NWとともにSIやクラウドを提供

インターネットイニシアティブ(IIJ)は、2008年にNTTドコモのネットワークを借りた「IIJモバイルサービス/タイプD」でMVNO事業に参入した。現在はコンシューマー向けと法人向けの両方を手掛ける。

法人向けのMVNO事業としては(1)USBドングルとノートPCによるモバイル利用、(2)SIMカードとタブレットのタブレットソリューション、(3)M2M、(4)他社のMVNO事業を支援するMVNEの4種類を展開する。

(2)のタブレットソリューションでは、2010年にアップルの一次代理店となりiPadのWi-FiモデルにIIJのモバイルルーターをセットにして提供してきた。最近では、AndroidやWindowsのSIMフリータブレットに安価なSIMカードを挿して利用したいとのニーズが企業の間でも増えているという。

その際、自社でクラウドサービス「IIJ GIO」を持ち、リモートアクセスサービスや認証サービスと組み合わせてソリューションを提供できる点がIIJの強みとなっている。「IIJは通信キャリアとSIerの2つの顔を持っているので、お客様が必要とするソリューションをコーディネイトしてご提案することができる」と営業推進部モバイル推進チームチームリーダーの青山直継氏は言う。

大規模なMVNO案件も登場
ネットワークとともにSI、クラウドを運用するという優位性から、IIJでは(4)MVNEの案件も増えている。「モバイル事業におけるパートナービジネスの割合は大きくなりつつある」と青山氏も認める。

MVNEとして同社は、「再販モデル」と「取次モデル」を展開している(図表1)。再販モデルは、パートナー企業がMVNOとして、IIJモバイルを自社ブランドで提供する。これに対し、取次モデルはパートナー企業がエンドユーザーにIIJモバイルを紹介し、IIJが自社ブランドでサービスを提供するもので、正確にはMVNOに含まれない。

図表1 IIJの法人再販/法人取次モデルの概要[画像をクリックで拡大]
IIJの法人再販/法人取次モデルの概要

IIJがMVNEとして扱う案件の多くが、企業にとって負担が少なく参入への敷居が低い再販型モデルだが、ここに来て新たなタイプのMVNOも登場している。

代表的な事例が、パナソニックだ。IIJはインフラ提供のほか、通信制御システムやリモートアクセス基盤、顧客管理や課金・請求などの業務システムといった関連システムを個別に構築した。パナソニックは、「Let’s NOTE(レッツノート)」や「TOUGHPAD(タフパッド)」といった自社のデバイスとネットワーク、クラウドをワンストップで提供する。再販モデルと比べると投資額ははるかに大きくなるが、一定の設備を自社で持つことで、用途に適した柔軟なサービス提供が可能になるという。

「製造業では『作って売り切って終わり』ではなく、ネットワークに接続して製品の付加価値を高める方向に向かう」と青山氏は予測する。実際、パナソニックの事例の発表直後より、メーカーからMVNOに関する問い合わせが増えているという。

IIJでは、再販型モデルの提供にとどまらず、こうした大規模なMVNO事業者向けの支援を強化していきたいとしている。

月刊テレコミュニケーション2015年2月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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