ソリューション特集AIで進化する「クラウドPBX」の今 刷新進むオフィス電話、各社の注目機能と選定時のポイントは?

業種・業界を問わず、クラウドPBXの導入が広がっている。AIや外部サービスとの連携も進み、業務効率化に役立つ機能が充実してきた。本稿では、各社の注目機能や導入効果、選定時のポイントなどを解説する。

続々登場するAI機能

そして、今後ますます重要になるのがAI機能だ。すでに各社がAIを活用した通話内容の文字起こしや要約などの機能を提供し始めている。

石渡電気は、NECプラットフォームズのPBXとUNIVERGE BLUEを組み合わせたハイブリッド構成などに、電話システムなどを手掛けるアセンド社の通話録音・AI自動要約サービス「RecACE plus」を連携させたソリューションを展開している。同社の石渡氏曰く、米OpenA Iの音声認識モデル「Whisper」を採用している点が特徴で、雑音が混じる音声でも高精度な文字起こしが可能だ。

都築電気のTCloud for Voiceは、留守番電話のメッセージをテキスト化する「テレワーク Call.AIボイスメール」をオプションで用意している。

プロディライトのINNOVERAも、録音した通話内容を文字起こしする「INNOVERA Text」や、留守番電話の内容をテキスト化してメールやチャットツールで受け取れる「Speech Posting」に加え、音声から通話相手の感情を解析して5段階で表示する「INNOVERA Emotion」などをオプションで利用できる。

ソフトバンクのUniTalkでは、AIアシスタント「Microsoft Copilot」と連携し、通話内容の録音やリアルタイムでの要約のほか、会話の文脈や通話相手の感情を分析し、適切な受け答えや次に取るべき対応を提案するコーチング機能を備える。

さらに今後は、AIが自動で電話応対して必要な場合にのみ担当者につなぐ委任応答や、通話内容をAIが分析して適切な担当部署へ取り次ぐ機能などもリリース予定だ(図表3)。

図表3 現在利用できるAI機能および今後利用可能になると見込まれるAI機能(一例)

図表3 現在利用できるAI機能および今後利用可能になると見込まれるAI機能(一例)

またソフトバンクでは、AI機能を備えたクラウドPBXサービス「Dialpad」も取り扱っている。AIによる文字起こしや通話内容の要約に対応するほか、Salesforceとの連携も可能で、文字起こしの内容をSalesforceに登録できる。「AI機能を重視する企業のうち、普段からTeamsを利用している企業にはUniTalk、Teamsを利用していない企業にはDialpadを提案している」(同社の松島氏)

クラウドPBXの導入効果は?

では、実際にどんな企業がクラウドPBXを導入し、どのような効果を得ているのだろうか。

都築電気のTCloud for Voiceを導入した雪印メグミルクは、スマートフォンで内線・外線通話ができる環境を整備し、オフィス以外の場所でも電話業務を行えるようにした。導入後の運用・保守も都築電気に委託することで、担当者がDX推進などの業務に注力できる体制を整えた。

野村不動産ホールディングスは、グループ8社にTCloud for Voiceを導入し、約2000台あった固定電話機を約30台まで削減。在宅勤務や外出先でも会社の電話番号で発着信できるようになったほか、組織変更やオフィスのレイアウト変更に伴う電話工事費もほぼゼロになったという(図表4)。

図表4 TCloud for Voiceの導入事例

図表4 TCloud for Voiceの導入事例

全国に約150拠点を展開するある地方銀行は、約20年前に導入した電話システムを使い続けており、担当者の不在時は紙のメモで伝言を残すなど、アナログな運用が常態化していた。また、老朽化したPBXや固定電話機の更新には約2億円かかることも判明。こうした状況を受け、ソフトバンクのConnecTalkを導入した。

全社員にスマートフォンを配布して電話環境を刷新するとともに、不要になった電話回線を解約。オフィスのレイアウト変更や人事異動に伴う設定変更も不要になり、従来の電話システムと比べて年間約1700万円のコスト削減につながったという。

NECプラットフォームズのハイブリッド構成とRecACE plusを組み合わせたソリューションも、数多くの導入実績があると石渡電気の星野氏。通話録音とAIによる自動要約が可能なため、「病院では入院患者の家族との『言った・言わない』のトラブル防止に、学習塾や学校ではカスタマーハラスメント対策に活用されている」。

クラウドPBXの導入が進むなか、今後は通話データのさらなる活用が期待される。「従来は、若手社員が先輩社員の電話応対を聞きながら仕事の進め方を学ぶことができたが、働き方の多様化によってそうした機会は減りつつある。録音した通話内容をAIで分析して顧客対応のノウハウを抽出できれば、若手社員のOJTにも活用できる」と都築電気の杉浦氏は語る。

ソフトバンクの山之腰氏も、「顧客と交わした通話内容をSFA(営業支援システム)やCRMと連携させ、顧客とのやり取りを履歴として蓄積したいという要望は多い」と話す。Dialpadなど一部のクラウドPBXではすでにこうした機能が実装されているが、ConnecTalkにも対応させたいとした。

クラウドPBXは、場所にとらわれない柔軟な働き方を支えるだけでなく、AIや外部システムとの連携によって、顧客対応の高度化にも貢献する。今後は、単なるビジネスフォン/PBXの代替にとどまらず、企業のコミュニケーションを支える基盤として、その役割を広げていくだろう。

[月刊テレコミュニケーション 2026年11月号の記事を再構成]

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

FEATURE特集

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。