日本の勝機は「別軸」にあり
――自律型AIの時代に向けて、日本はどう進むべきですか。
栗原 ChatGPTのような基盤モデルは、より多くのデータを買い、より多くのコンピューターで構築できた者が勝ちます。つまり、アイデアよりもお金です。勝負に参加できるのは、ビッグテックと中国くらいで、残念ながら日本の出番はありません。経済安全保障の観点から国産基盤モデルを作ることは必要ですが、基本的には基盤モデルを使い倒す側に回り、ビッグテックと別軸で勝負するほかないと思います。

――具体的にはどういった軸があり得ますか。
栗原 次の2つです。
1つめの軸は、基盤モデル以外のまだ実現できていない領域です。ビッグテックは「学ぶ・考える」AIを作りましたが、自律型AIを完成させるには、動機や感情といった「動く」の部分を作ってドッキングさせる必要があります。こうしたまだ実現していない独自性を発揮できる領域を貪欲に取りに行くべきです。
僕らの研究室では、そうした自律型AIの実現を目指し、アフォーダンスに加えて、触覚、エゴ、デジタルアバターなど、6つのテーマに取り組んでいます。
もう1つの軸は、高齢化や人材不足、技能承継といった現場の課題を具体的に解いていくことです。AIはもちろん役立ちますが、AIにこだわる必要はなく、大切なのは総合力です。地に足を着けて、現場の課題をしっかり解いていかなければなりません。
あと本当に重要なのは、特に若年層の教育ですよね。
東大・京大の入学試験問題でAIが最高点を出したというニュースがありました。すでにある知識を使うのであれば、今はもうAIの方が優れています。
しかし、生成AIの基本原理は確率モデルです。人間よりレベルは高いですが、個性はなく、似たり寄ったりです。対して、万能ではない人間には個性というバイアスがあり、結果的にそれが新たな発見につながります。そもそもAIの知識にしても、人間が生み出した圧倒的な知識でできているのです。
ChatGPTの登場から、まだ数年です。文部科学省では、次期学習指導要領に向けてAIリテラシーの強化が検討されていますが、現在の技術を前提にAIリテラシーを教えるのであれば、あまり意味をなさないでしょう。今10歳の子供が20歳になるころには全然違う世界になっているのですから。
1人ひとり違うことを考える。その個性にこそ、人間の魅力はあります。ですから私は、もっとイノベーティブに、多様な観点から考え、行動するための意欲や好奇心を育てることに力を入れるべきだと思っています。
AI依存という「ダークサイド」の入口は、常に開いているのです。











