10倍のスピードで開発と展開が可能に
欧米企業のIoTに対する取り組みを紹介しましょう。弊社は欧米企業のIoT推進責任者について調査しました。IoT責任者の最も多くを占めたのはCIO/情報システムで、経営トップの社長/CEOが続くという結果となりました。日本企業は、設計開発部門がIoTに関する企画をスタートさせて、全社で取り組むフェーズに入ると情報システム部門が参画するというケースが多いように思います。
弊社は欧米企業のIoTに対する投資規模も調査しました。2018年までの投資規模として、10億円未満とする企業が約半分、10億円以上とする企業も約半分を占めました。IoT/M2M分野では日本企業が先行していますが、欧米企業はトップ主導で大胆な投資を行い、日本企業をキャッチアップしようとしています。
弊社ではIoT活用の成熟度を、「接続していない」「不定期な接続」「定期的な接続」「接続による業務効率の向上」「全てがつながり新価値が創出」と分類しています。「定期的な接続」から本格的なIoTの活用が始まります。ここで企業が気にするのは通信網のスピードとデータを保存するためのコストです。「接続による業務効率の向上」段階における企業の課題は、いかにして宝の山を見つけるかということです。PTCはIoTプラットフォームの提供によってその課題に対する解答を用意しています。
図表3 「モノのインターネット」成熟度モデル |
次にIoTアプリケーションの進化について見ていきましょう。IoTアプリケーションは、まず視認型アプリケーションから始まります。視認型アプリケーションでデバイスからセンサー情報を集めて状況を確認した人間が業務アプリケーションやデバイスの操作を行います。次の段階の遠隔操作型アプリケーションでは、デバイスからのセンサー情報をもとにダッシュボード内で行うべき操作を判断し、業務アプリケーションやデバイスへの操作もダッシュボードから行うようになります。その次の段階の自律型アプリケーションは、アプリケーション内に専門家のノウハウを組み込むことによって業務アプリケーションやデバイスに自律的に指示を出すようになります。視認型アプリケーションから遠隔操作型アプリケーションへ、さらに自律型アプリケーションへと改修していくプロセスは永続的に続くものだと考えています。
図表4 IoTアプリケーションはKnow-howを吸収して進化する |
ここでIoTプラットフォームに求められる要件について考えてみることにします。企業のIoT活用の前提として、ビジネスモデルを確立までに試行錯誤を伴うとともに投資対効果が不明確な中での取り組みとなること、さらにIoTビジネスプロセスの成熟度を高めていく仕組みが必要となることが挙げられます。そのため、IoTプラットフォームには、(1)ダッシュボードの開発生産性が高い、(2)システム基盤への初期投資が抑制できる、(3)アプリケーション層とデータ層の分離、という3つの要件が求められます。PTCは、(1)Mashup Builderによるノンプログラミングでのダッシュボード開発、(2)オープンソースでのNoSQLデータベースでビッグデータを処理、(3)全てのデバイスとビジネスアプリケーションをオブジェクト化して管理することによって3つの要件に応えるIoTプラットフォーム「ThingWorx」を提供しています。このIoTプラットフォームの特徴は、従来に比較して10倍のスピードで開発と展開が行える高い開発生産性を実現していることです。
図表5 IoTプラットフォームに求められる要件 |
IoTの活用成熟度が高まると、製造業の設計者はアフターサービス部門の点検データや顧客の操作データを自動的に入手することが可能となります。そのデータを設計にフィードバックして製品のダウンタイムを減少させたり、アフターサービス業務における部品手配をよりスムーズに行うことが可能になります。企業はそれらの成果のさらに先に新たなビジネスチャンスを生み出すことができると考えています。
弊社は2014年8月にIoT分野において豊富なアプリケーションを提供しているAxeda会社を買収しました。Axeda社はすぐに使える業種ごとのIoTアプリケーションをそろえています。10倍のスピードで開発と展開ができるIoTプラットフォームのThingWorxとともに顧客のアプリケーション開発・活用を支援します。また、パートナーとともにデバイス・クラウドを提供し、簡単で安全な接続の確立を支援します。弊社は、今後も顧客のIoT事業を成功に導くための投資を継続していきます。