通信キャリアにとってM2Mビジネス領域の拡大点に
――M2M機器が大量に利用されるとビッグデータが発生しますね。そこへの具体的な対策はありますか。
山本 大量のデバイス数がM2Mのネットワークにつながると、大量のデータが発生します。そこで、ビッグデータへの対応とその活用もM2Mの重要なキーワードと位置付けています。HPでは、大量データを分析して価値あるものに変える分析基盤を用意して、M2M向けソリューションポートフォリオとして提供していきます。具体的なM2Mビッグデータ分析ソリューションの一つとしてM2Mネットワークに流れているデータを分析して、不正利用リスクを発見する「Fraud Risk Management」(図表3)というソリューションがあります。
図表3 M2Mビッグデータ分析ソリューション例―Fraud Risk Management[画像をクリックで拡大] |
このソリューションは、M2Mネットワークに流れる膨大なデータを収集し、その中身をリアルタイムに分析します。分析した結果があらかじめ登録しておいたポリシー(不正パターンや閾値)にマッチすると管理者にアラームを通知します。M2Mの普及に伴い、例えば、機器に組み込まれているSIMを抜き取って複製し、複製したSIMを通話に使用するといったSIMの不正利用が起きる可能性があります。こういったSIMの不正利用などを早期に発見、緊急度に応じた即時アクションを行えるソリューションになります。
――スマートメーターを提供している企業などがM2Mネットワークの外部からFraud Risk Managementなどのビックデータ分析ソリューションを利用することは可能でしょうか。
山本 ソリューション自体は主に通信キャリアやMVNOが導入、利用する想定ですが、HPのM2Mサービス公開基盤を通じて、M2Mサービスプロバイダやユーザー企業もFraud Risk Managementといった機能や情報にアクセスすることが可能となります。HPは、このような機能を外部のサービスプロバイダやユーザーが利用可能とするAPIの提供やAPIアクセス管理(HP SDP)を通信キャリアに対して提供しています。HP SDPは、ショートメッセージ送信や呼制御機能の外部公開用途でKDDI様に採用いただくなど、国内においても実績をもっています。
――このようなAPIを提供することで、将来的に通信キャリアのM2Mソリューションがどのような展開をみせることを狙っているのですか。
山本 通信キャリアのM2Mビジネス領域は、これまでの「コネクティビティプロバイダ」という位置付けから、「サービスアグリゲーター」や、「サービスプロバイダ」へと拡大していくと考えています。
サービスアグリゲーターとしてのビジネスは、M2Mネットワークで収集したデータを通信キャリアが加工し、そのデータをM2Mサービスプロバイダに提供するなど、エコシステムを構築して管理することによって収益を上げることです。そして、通信キャリアみずから開発したM2Mアプリを提供したりパートナーが開発したM2Mアプリを提供して収益を上げるのがM2Mサービスプロバイダとしてのビジネスになります。HPは、こうした通信キャリアのM2Mビジネス領域の拡大に対応するM2Mソリューションのポートフォリオを、今後も拡充させていきたいと考えています。