都心部では75Mbps以上の高速化が難しかったKDDI
KDDIが他社に先駆けてCAの導入の踏み切った理由の1つに同社の周波数事情が挙げられる。
KDDIは20MHz幅の割当を受けている2.1GHz帯を使って、昨年秋から大都市圏で150Mbpsサービスを展開している。しかし、トラフィックが集中する都心部には3Gのユーザーが相当数残っているため当面LTEには15MHz幅以上を割り当てるメドが立っていない。800MHz帯もLTEで使えるのは10MHz幅であるため、都心部では当面75Mbps以上の高速化が難しい状況にあったのだ。
これに対し3GユーザーのLTEへの巻き取りを早くから進めてきたドコモは、3Gのトラフィック対策に利用してきた1.7GHz帯の20MHz幅をすべてLTEに振り向ける形で、昨年秋から都心部を中心に150Mbpsサービスをスタートさせた。都心部での最大通信速度に大きな差が付けば、販売面での影響は小さくない。
KDDIは、今回のCAの導入により3月末時点で700局程度にとどまっていた150Mbps対応基地局を、都市部を中心に一気に約2000局に拡大、2014年度末には2万局とする計画だ。既存のLTE 設備を有効活用し、比較的少額の投資で短期間に150Mbps化を実現できるCAは、KDDIにとって打って付けのソリューションだったといえるだろう。
図表 KDDIのキャリアアグリゲーションの概要 |
だが、今回のKDDIのCAの展開には限界もある。2.1GHz帯と800MHz帯がともに混み合っている都心では、両者を組み合わせても実効速度の大幅な向上は見込みにくいのだ。都心でのスループット向上の役割は昨秋サービスを開始したばかりでネットワークに余裕があるWiMAX 2+が担うことになるものと見られる。
スマホ/タブレットでWiMAX 2+を利用することで、LTE網のデータトラフィックをUQのネットワークにオフロードさせることも可能となる。UQは2015年3月までに2万局のWiMAX 2+対応基地局を整備する方針だ。
KDDIにとって、カタログスペックでドコモに対抗するというマーケティング上の狙いに加えて、もう1つ大きな目的がある。それは、安定した高速通信の実現だ。
KDDI 技術統括本部長 執行役員常務の内田義昭和氏は4月21日に報道関係者向けに開催した技術説明会で、CAには(1)通信速度の向上以外にも、(2)安定した高速通信の実現、(3)統計多重効果によるネットワーク効率化が図れるというメリットがあるとした上で、(2)が最大の利点だという見方を示した。
「伝搬特性の異なる800MHz帯と2.1G帯を組み合わせることで、片方の電波が弱くなっても他方が補う周波数ダイバシティ効果が期待できる」というのである。