――4月に新たな企業ネットワークサービス「FENICS IIユニバーサルコネクト」の提供を開始し、さらにユニファイドコミュニケーション分野においてシスコシステムズと提携するなど、次々と新たな取り組みを開始しています。それらの狙いにも関わりますが、まず御社では、企業ネットワークの将来像をどのように捉えているのでしょうか。
川妻 当社の企業向けネットワークサービスの基本方針は、2007年にスタートした中期計画から、まったく変わっていません。ひと言で言えば、回線の通信速度や料金といった要因が重視されていた従来の形態から、企業ネットワーク事業のビジネスモデルそのものを変化させていくということです。
速度が何Mbpsだとか、回線が3GなのかWiMAXなのかといったことではなく、お客様の望むことが実現できるサービスであるかどうかということが重要です。08年度も、企業ネットワーク事業は当初計画以上の実績を上げることができました。これは、「回線ビジネス」から脱却したネットワークサービスを提供しようという我々の方針が、お客様にも受け入れられつつあるということでしょう。
――FENICS IIのコンセプトとして、事業所などの場所ではなく、端末、つまり人とビジネスをつなぐネットワークサービスを提供するということを、以前から強調されていますね。
川妻 無線通信も含めて回線のスピードが向上し、価格も安くなり、さらにユーザーニーズの高度化・個別化に伴って、ネットワークに接続する端末もますます多様化していきます。この流れは、自然と進むものです。重要なのは、それに伴い、企業ネットワークの利用形態が進化していくということです。
従来の企業ネットワークとは事業所などの場所をつなぐものであり、PCでそれを利用していました。しかし今後求められるのは、業務を遂行する現場を直接つなぎ、モバイル端末や業務毎の専用端末から利用できるようなネットワークです。
そのためには、LAN/WAN、インターネット、モバイル網の垣根を無くし、場所や接続方法に関係なく安心安全に、しかも利便性を損なうことなく社内システムやデータセンターに接続できなければなりません。つまり、「誰が」「いつ」「どこで」「どの端末から」「何をするのか」によって、ユーザー毎に仮想ネットワークを構築する形態になります。
従来のファイアウォールの単純なロジックではなく、企業のセキュリティポリシーによって制御する新たな仕組みが必要です。これを実現したのが、今回発表した「FENICSⅡユニバーサルコネクト」です。
クラウド時代への布石
――ユニバーサルコネクトは、従業員がモバイル端末を使って外出先から社内システムを使うシーンを想定したものですね。これを使うことで、ユーザーは具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。
川妻 利用者は、1つのID/パスワードにより、アクセス経路や端末種別を問わず、どこからでも社内システムに安全に接続できます。端末認証や生体認証も組み合わせることが可能です。
ユーザー企業は、リモートアクセス環境を実現するために、アクセス毎に個別にネットワークを構築する必要がありません。
ID/パスワード認証については、お客様自身がIDを自由に定義できるのが特徴です。従業員番号など、既存の管理体系をそのまま用いることもできます。端末認証をセットで用いた場合には、利用ログも取得できるので端末の稼働状況を容易に把握できるようにもなります。
さらに、携帯電話からの業務システム利用をしやすくするため、PC向けのWebコンテンツを携帯ブラウザ向けに自動変換する「モバイルコンテンツ変換」の機能も用意しました。
――接続方法や端末の違いを意識せずに社内のデータやアプリケーションが利用できるようになることで、ユーザー企業はクラウドコンピューティング環境にも移行しやすくなりますね。
川妻 ユニバーサルコネクトを利用することで、お客様自身のデータセンターや富士通のデータセンター、他社SaaSなどのクラウド環境と利用者を、安心安全につなぐことができます。当社のクラウド戦略においても鍵となるサービスだと言えるでしょう。