NTTドコモが法人市場で、熾烈化する中小企業分野を軸に巻き返しに向けた準備を進めている。その手始めとして今年7月、大規模な構造改革に着手する。子会社の再編などにより、法人営業に500人の人員を振り分ける。さらに2016年度末までには1000~2000人を増員する計画だ(図表1)。2008年7月に地域会社8社を統合し、全国1社体制に移行して以来の大幅な組織再編となる。
図表1 事業構造改革の概要 |
携帯電話の法人市場は近年、大企業から中堅中小企業へと競争の焦点が移りつつある。ドコモでは2010年7月に中小企業を担当する第3法人営業部を新設したが、基本的にはドコモ系販売代理店が営業の中核を担っていた。今回、大企業を担当する第1・第2法人営業部と同様、第3法人営業部内にも直営部隊を置き、ドコモ自ら中小法人顧客の開拓に乗り出す。
一方、これまで得意としてきた大企業向けのアカウント営業も、現状は大手銀行を2名のアカウントマネージャー(AM)でカバーするなど必ずしも十分な体制とは言えない状況にある。このため、企業ごとのAMを増やし、より強力なフォロー体制を構築して他社への流出を防ぐ考えだ。
携帯電話における競争軸は、端末/サービス/ネットワークの3本柱と言われる。法人市場ではサービスはソリューションと置き換えてもいいが、ここ数年ドコモは、他社のiPhone/iPadの豊富な導入事例やGoogle Appsを主軸とするクラウドサービスと連携した提案活動で攻勢をかけられてきた。
しかし、ドコモ法人も昨年11月からiPhone 5s/5cの取り扱いを開始。また、Windows 8タブレットを他社にはない強みとしている。スマートフォンやタブレットと組み合わせて使うクラウドサービスについても、グローバルに普及が進むグーグルの「Google Apps」やマイクロソフトの「Office 365」に加えて、昨年9月からは独自のアプリケーションサービス「ビジネスプラス」を提供するなど、急速にラインナップを強化している。他社に追随する形ではあるが、「ようやく道具立てが揃った」と取締役 常務執行役員 法人事業部長の眞藤務氏は言う。
人員増強と営業ツールが整ったドコモがこれから法人市場でどのように巻き返すのか。スマートフォン/タブレット、ソリューション/サービス、営業体制の3つの視点から3回に分けて見ていく。